Fighter（ファイター）（吉田直）
沖田総司と土方歳三が対決！？
なんとも新選組ファンの興味を惹く構図ではないでしょうか。しかも、舞台となるのは西南戦争前夜、明治十年です。あれ？彼らは既に死んでいるハズでは。そう疑問に思うのが普通です。その通り、確かに彼らは幕末・戊辰戦争の頃に亡くなっています。けれど何者かが死体を甦らせたのです、優秀な戦闘機械として。魅力的かつ残酷なことです。死してなお剣鬼であることを求められたのですから。でも、一筋の希望もあります。あるキッカケで沖田総司は自我を回復してしまいます。そして自分が人間なのか死者なのかと葛藤し始めます。その葛藤の中で挿入される過去、光縁寺に眠る女性の追憶は作者のオリジナルですが、一つのあったかもしれない可能性でしょう。「死人は夢を見ない」という同じフレーズの繰り返しが奇妙な感覚を与えて、沖田総司がどちら側の存在なのか曖昧にしていて印象的です。
こんな沖田総司と出逢う生身のヒロインはイギリス人の少女。元は商会の娘だったのが、父を殺され、使用人を殺され、婚約者には見捨てられ、陰謀に巻き込まれて逃避行を始めます。誰一人味方のない逃亡者と、自己を模索する戦士。その陰謀の背後に存在するのは歴史の古代から対立を繰り返すテスカトリポカとケツアルコアトルという超常の存在。その闘争に巻き込まれた少女の運命は？って感じで一気に読み通してしまいました。
舞台が明治時代ということで、警察官となった斎藤一も登場します。土方歳三と斎藤一の対決もあったりして細部の懲りようもなかなか楽しいです。イギリス人の少女が日本の緑茶を飲むシーン
はカルチャーショックって感じで笑えます。軽い笑いを挟みながらも、ハッピーエンドに終わりようのない設定から物語は壮絶な結末を迎えます。果たして救いはあるのでしょうか？ それはここには書いてはいけませんね。
ところで、これって吉田直流・新選組版『魔界転生』なのかな。やっぱり・・・
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