上海ガスライトエイジ
19世紀！ それは産業と貿易の発展が人びとの思想と生活を変えた時代だッ！ 依然！食糧不足や貧富の差が激しいにもかかわらず大人も子供に「自分もいつか 金持ちと同じようなくらしができるッ」このような幻想をいだいていたッ！ それは嵐のようなすさまじい渇きだったッ！
（『ジョジョの奇妙な冒険 Part1ファントムブラッド』第1話より）
そしてその渇きは帝国主義となって世界各地を経済的に侵略していった。四千年の伝統を誇る中国も無事では済まされなかった。時の中国王朝、清朝は大英帝国とのアヘン戦争に敗北し、不平等条約を結んで開国した。上海には英国人が入植し、租界を形成した。次いで、仏国、米国が進出した。出遅れた帝政ロシアやドイツ第二帝国は租界を持たないまでも、パワーゲームに参加すべく先兵を送り込んでいた。
一方で、日本ではペルリ来航により維新の嵐が吹き荒れ、1868年に明治維新による新政府が建てられた。徳川幕府は国を追われ、護衛の新撰組とともに、坂本竜馬の導きによって上海へ亡命した。清朝政府は吸血鬼など闇勢力と戦うことを条件に、サムライ租界への居留を認めた。
そして、1870年。虚実入り混じり、列強群雄が割拠する魔都・上海を舞台に「架空歴史浪漫」の奇妙な冒険が繰り広げられる。
１．ステージの概要
『ダブルクロス』第二版には「ウィアードエイジ」という1930年代の冒険を扱ったステージがあった。例えば『インディ・ジョーンズ』や『ジョジョの奇妙な冒険 Part2戦闘潮流』のような古代の謎と冒険に満ちたステージだった。わかりやすい敵としてナチスが用意され、PCたちが協力して戦った。現実の歴史をフレーバーにしたり、歴史のifを扱ったりした。公式設定には「明朗快活！荒唐無稽！勧善懲悪！冒険浪漫！痛快至極！」という５つの標語があった。
「上海ガスライトエイジ」は「ウィアードエイジ」を参考にしつつ、19世紀後半を扱った別のシステム『上海退魔行』（2003年）の世界設定を取り入れたものだ。1870年の魔都・上海を舞台としている。吸血鬼を始めとする闇の勢力が敵として存在するものの、各国の思惑の違いや利害の対立に振り回されることがあるかもしれない。
「退魔夜行、外交陰謀、呉越同舟、諜報合戦、冒険浪漫！」という感じの冒険になるだろう。
上海ガスライトエイジの規範
（1）PCは全員オーヴァードである。ただし「オーヴァード」という呼び名は存在しない。武術家、道士、魔術師などと呼ばれる。
（2）PCたちは朋友（ポンヨウ）である。異なる勢力に所属し、独自の目標を持ちながらも、イザというときは命を賭けるに値する友人関係である。
（3）レネゲイドウィルスについては、まったく認識されていない。
（4）レネゲイドウィルスによる現象は、魔法、奇跡、超科学、武術、仙術・宝貝、忍法などの概念で説明される。
（5）「ジャーム化」は、堕落する、外道に落ちる、修羅化する、という言葉で言い換えられる。
２．ダブルクロス3rdのデータ調整
ステージの時代設定に合わない情報技能や知識技能は適当な名称に変更する。これに伴い、アイテムの「コネ」も変更する。〈知識：レネゲイド〉〈情報：UGN〉〈情報：ウェブ〉は存在しない。代わりに〈知識：神秘〉〈情報：新選組〉〈情報：サムライ〉〈情報：闇〉〈情報：社交界〉〈情報：英国租界〉を追加する。
上海ステージ特有のカヴァー／ワークスをいくつか追加する。
上海浪人：希望を託して流れて来た人。素性の知れない者がカヴァーとしてよく使う。
サムライ：主に旧江戸幕府の遺臣たち。武士道に生きる者。
ストリート・キッズ：ストリートを逞しく生きる孤児たち。
冒険者：未踏破地域の探索や、古代の秘宝を調査する人々。
グリフィン：若きエリート。貿易商人として活躍している。
ブルーブラッド：財閥や貴族など、上海の支配階級およびその子女。
４．パーソナリティーズ
５．関連年表
時代背景を知るうえで史実の事件を一部あげてみた。
ルールブック収録の年表は、あくまで『上海退魔行』世界のものだが、ここでは史実のみ紹介する。