妖怪ネットワーク＜虹＞について

　ひと昔前、洛北大学には「虹」という喫茶がありました。生協施設の一つでありながら、他の食堂とは異なった独特の雰囲気に固定客が多かったようです。というか、部室を持たない文化系サークルのたまり場のような場所でした。しかし、平成の始め頃にいつのまにか閉店してしまいました。しばしの時を経て、大学のすぐ近くで存在が確認された「虹」は、かつての大学生協施設の面影を受け継いだ喫茶店です。いちおう朝から晩まで営業していますが、正式な営業時間・定休日等は不定です。もっとも常連しか来ないため問題はないようです。従業員はマスター以外に見かけられていません。客が少ないうえセルフサービス方式なので、何とかなっています。マスターが外出するときなどは常連の赤目一二三氏が店番をしています。赤目氏は何を生業としているのかわからない人で、いつも「虹」にいてTRPGのルールブックを読んだりゲームブックをしたりしています。

　喫茶店「虹」へは、あるはずのない道、通称“ローソン横の小道”からでないといけません。百万遍の銀行横、吉田泉殿之跡の石碑が目印です。かつてのたまり場的喫茶店の面影を残しているためか、このネットワークには過去への想い“想い出”に関わる妖怪が比較的多いようです。古時計や提灯、草履、サイコロなどの付喪神たち。マスターは能力も正体も知られてなく皆から“マスター”と呼ばれている超存在でしたが、ニューヨーク沖の大戦で愛馬とともにGODと戦ってから誰も姿を見ていません。

　普通の人は来られない「虹」ですが、本当に注意すべきは出てから通常空間の戻るまでの間です。東大路に着くまで一度も振り向いてはいけません、二度と戻れなくなります。と言われています。その理由は、想い出は振り返るものではなく時々思い出すものだから、と噂されています。