第１話「ブラッディロードは月に吠える」

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■蔵木秘愛子（PC3）の回想
「やーいお前の父ちゃん犯罪者ー」
　幼い日の残酷な仕打ち。父親、蔵木誠造が列車爆破事件の主犯として指名手配されていた。近所の子供たちもそれを知って、秘愛子（PC3）を苛めていたのであった。
「父さんは犯罪者なんかじゃない！」
　秘愛子は必死に否定するも、泣きじゃくりながら帰途に着く。
「お父さんは、誠造さんはこの国を良くしようと立派に働いているのよ」
　優しく出迎えてくれる母。だが、母が心労と過労で倒れるまで時間はかからなかった。気づけば親戚中をたらい回しにされ、蔵木秘愛子（PC3）は八幡グループの施設に居た。特別講師として招聘されていたフィン・ブースロイドに才能を見いだされ、訓練の日々を過ごす。15歳の頃、施設を訪れた真砂敬次（5年後に結婚した夫）に一目惚れしたことなどを思い出す。

　ある日、平歯重工後方課のエージェント“逃れえぬ重圧”として呼び出しがかかる。奈良県K市の古墳にあるという“神秘的な薬”の回収を命じられた。なんでも「どんな攻撃を受けても平気な兵士」を作り出せる、とか。ともかく闇の任務の始まりである。

■遠藤あてみ（PC2）の躊躇い
　とある線路上で、ジャームとの戦闘を繰り広げていた。“Double Shotgun Girl”が先頭を切り、問題のジャームを追い詰めるも、何かに気づき、あてみは一瞬撃つことを躊躇する。その瞬間、あてみの足元で爆発が起こる。直後に一般のUGNエージェントたちの悲鳴。掃討部隊は（実質的な）全滅へと追い込まれてしまった。

　古参の隊員の話によると件のジャームの手口は、数十年前の左翼集団「プラム・ファーム」のものと酷似しているらしい。さらに、生存者を救出していて、一冊の旧い同人誌を見つけた。以後、このジャームを同人誌のタイトルにちなみ“腹腹時計”と呼ぶことにする。「次こそ蜂の巣にしてあげるわ！“腹腹時計”！」

　遠藤貴夫はあてみが失敗したのが信じられない様子だった。「あてみ、任務に失敗したのか？　いや、この私が完璧に調整したお前が失敗するわけが無い」
そんな矢先にコードウェル博士の演説が流れた。そして、コードウェル博士の呼びかけに応じて、何人ものUGNエージェントが離反したと同時期に、遠藤貴夫もFHへと移籍した。

UGN幹部「“DSG”、ファルスハーツになびいた父の汚名を雪ぐために、より一層活躍したまえ。次の任務は…」
遠藤あてみ「了解しました」「（小声で）……私は……父さんに……捨てられたんだ……」
そして奈良県K市の八雲学園へ、峰良太（PC1）の監視任務につく。

■峰良太（PC1）の悪夢
　何者かに追われる良太、その姿は猫のものだ。暗い小路に追い詰められ、追跡者たる化物の鉤爪で引き裂かれ、猫は絶命する。そんな悪夢から解放する兄、大地の声。
「朝飯できてるぞ。早く起きろよ。」
眠い目をこすり食卓に向かうと、もう一言付け加える兄。 「そうそう、ミケ（峰家で飼っている黒猫）のことだけど、猫探しのプロに探してもらうように頼んどいたから。」

　生徒会長の山住朱子から空席となっている副会長のお誘いがきたり、何を勘違いしてかそれを羨むやっかみの声が聞こえてきたりするものの、概ね普段どおりの日常だ。違うことといえば、志賀清美にわざわざ「今日ちょっとおかしいんじゃない？」などと声をかけたことぐらいか。
　志賀清美は「優等生のあんたに言っても仕方の無いことよ」と返した。小声で聞き取りにくかったが「あの人に会ってみようと思うの」そうはっきりと聞こえた。すぐにやっかみの声第二波が被さってきたのでどうでもよくなったが。

■遠野ユウ（PC4）の人生相談
「やあ、何かお悩みかい？」
「おじさん誰？」
「君にはそう見えるのか、僕はユウ。皆の、君の友達だよ。」
「……人が化け物になるって話、その姿に変身すると戻れなくなる……」
「ジャームの事が聞きたいのかい？」
「ええ、知らない間に獣の毛や血が手についてたら、私もそうだってこと？」
「自覚があるならUGNにでも相談すれば…」
「無理よ！言えるわけない！」
「…なら、友達に会ったらいい。家族でも、君ぐらいの年齢なら恋人か。ジャームとオーヴァードとの違いは、周りの人々との絆だからね。」

　遠くから響いてくる消防車のサイレン。見やると繁華街、人々の声を聞けばどうやらデパートが火事らしい。

「おじさん、アドバイスありがとう。行かなくちゃ。」
「役に立ったなら嬉しいよ。困ったことがあれば、呼んでくれればいい。」
「私は志賀清美。…またね。」

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■転校生と猫娘
　UGNの手回しは順調で、首尾よく遠藤あてみ（PC2）は峰良太（PC1）と同じ2年B組に転入して来た。型どおり紹介される遠藤あてみ（PC2）、意味ありげに峰良太（PC1）に微笑むも肝心の良太は単語帳を眺めている。生徒会長の山住朱子が親切にも「困ったことがあれば生徒会に頼るといいわ」と語りかけてくれるも、ウザがるあてみ（あなたのせいで良太に話しかけられなくて困ってるのよ！）。仕方なく（？）消しゴムを良太の眉間にブチ当てるあてみ。「だ、大丈夫ですか？」「あ、いや、気にしないでいいから」まさになしのつぶてである。
　季節は秋、もうすぐ文化祭である。ホームルームで出し物を相談し、仮装喫茶に決まった。不意に出てきた“猫娘”という単語に反応してしまう志賀清美。ついでとばかりに現地エージェントに挨拶する遠藤あてみ（PC2）。
　清美からの返答は「あなたからは硝煙の匂いがするわ」
あてみ「あなたも同じでしょ、よろしくね“クラリス”さん」

■古墳と探偵
　八雲学園裏手に存在する前方後円墳。蔵木秘愛子（PC3）は石室に潜入したものの、どうやら目的の「神秘的な薬」は持ち去られた後らしい。何か手がかりは残ってないかと探り始めたところ、ガコンッとなにやら嫌な音がする。振り返るとそこには埴輪型ガーディアンが立っていた。様子見で放った一撃目を外し、重たい反撃を食らう秘愛子、その顔からは既に血の気が引いていた。一撃で倒されたからではない。肉薄されると反撃の手が存在しないことが問題だった。
　しかし必死の逃走劇は、一条の雷撃で妨げられた。雷撃を発したのは、鳥打ち帽にトレンチコート、いわゆる探偵ルックの男だった。彼によると“薔薇の魔女”がこの古墳に出向いていたという。助けた見返り＆情報料に猫探しを手伝えと探偵が言った。そのぐらいなら構わない、と蔵木秘愛子（PC3）は探し始めた。すると、近くの木の影に黒猫の死体が見つかる。なにやら大型の獣に引き裂かれた傷が死因らしい。死体を検分していると、探偵に急用が入たようだった。蔵木秘愛子（PC3）は「峰という少年へ報告書を届ける」ことを頼まれてしまう。
「これで借りは返したってことでいいかしら？　そういえばお名前は？探偵さん」
「それでいい。オレは探偵B。また会うこともあるだろう」

■デパート火災と救命病棟
　多彩なアドバイスを駆使し、デパート火災の被害を抑えようとするユウ（PC4）。しかし、どうしても多少の怪我人は出てしまい、K市総合病院の救命病棟は修羅場の様相であった。ユウ（PC4）は、献身的に働く看護師原田美智子のところに話しにいく。
「お疲れのようだね、温かいものでも飲みなよ」
「このぐらいで私たちが倒れるわけにはいかないわ、最近事故が頻発してるの」
「それでもこの病院はすごい先生が居るそうじゃないか」
「進藤先生ね。あの人は別格よ。“ブラッディロード”だなんて呼ばれてるけど、誰よりも患者を助けたいだけなの」

■買出しと初陣
　文化祭の準備に、数班に分かれて買い出しに行く事になった。遠藤あてみ（PC2）は峰良太（PC1）や山住朱子、他男子３名と一緒の班になった。仮装衣装の材料などを買い終えての帰り道、2人は違和感を覚える、ワーディングだ。クラスメイトたちが気絶し、山住朱子も気絶したフリをした中で、２体のジャームが襲い掛かってきた。熊人間と虎人間だ。必死で応戦するも、肉体派のジャームに対して、覚醒したばかりの良太（PC1）の攻撃は当たらず、あてみ（PC2）のショットガンもかすり傷を負わせるだけ。
　それを見かねたユウ（PC4）が秘愛子（PC3）に緊急コールをかける。鳩の飛ぶ音とともに、秘愛子（PC3）が登場し、手際よくジャームを片付けていく。さすがに４人がかりなら負けはしない。
　この戦いを見ていた視線があったのだが、死闘を繰り広げていたために誰も気づかなかった。学校に帰って来て、保健室に駆け込む良太（PC1）とあてみ（PC2）。生徒会長、山住朱子に手当てしてもらうのだった。
#実はそこまで強敵ではなかったんですが、あまりに２人のダイス目が悪かった。

■手紙配達人とぬらりひょん
　思い出したように手紙を届けに向かう秘愛子（PC3）。しかし、受取人不在でしばらく待たせてもらうことにする。先に帰ってきたのは兄の大地。良太（PC1）が帰ってきてから渡そうとしていたのだが、どうもしばらく帰ってこないらしい。どこからともなく現れたユウ（PC4）の助言を聞いて、大地に手渡すことにした。手紙の中身は、猫探しの報告書だったらしい。結局、正しく依頼人に届けることができた。
大地「このことは、しばらく良太には黙っておいたほうがいいか…」
　峰家を後にした２人は、そのまま情報を収集・統合することにする。秘愛子（PC3）はここでようやく先ほど共に戦った学生が良太だと認識する（笑）

主な情報は以下のとおり。
・“薔薇の魔女”原田美智子
“ブラッディロード”進藤医師に上司/部下を越える恋心を抱いている。進藤医師の救命活動では、この3か月は救命率100%を誇る。
・志賀清美
　裏路地でヤクザに喧嘩を売って半殺しにしている女子高生の一人。数か月前、交通事故に遭ったが脅威の回復力を見せ、何事も無かったかのように振舞っている。

■真夜中の翼とナイトピジョン
　峰家に良太（PC1）が帰宅した。晩飯時の会話。下宿が決まったためか、大地は高揚している。最近、大地のファッションセンスが良くなったらしいが、それが何故か、というところまでは、良太（PC1）には気付かない。そんな明るい話ばかりでもなく、黒猫のミケが死んだことを聞かされる。情報源は“猫探しの伝説の探偵”らしい。
　その夜、いつものように良太（PC1）が熱心に勉強していると、大地がネット動画を見せた。その映像には、異形の姿に変貌してヤクザ狩りをする志賀清美が映っていた。サイト名は「真夜中の翼」で、主催者はナイトピジョンという。他にも、人間が突如化け物に変身する映像がいくつかあった。変身前の姿は良太（PC1）と同じ、八雲学園の制服が多かった。嘘か真か、変身した人間にはK市総合病院への入院歴があるとか……。

■K市支部と作戦会議
　支部長の城山がK市支部のエージェント総員をフラワーショップ「カリオストロ」に招集した。といっても、遠藤あてみ（PC2）と志賀清美の2人だけだが。黄昏時に何者かに襲われる事件について、志賀清美が調べたところK市総合病院が怪しいらしい。未認可の薬を使っており、その生還率はなんと100%だとか！　ただし、退院後数週間から数か月でオーヴァード化することがあるらしい。そう報告する志賀清美の顔がどこか曇る。ちなみに、数日前のデパート火災は爆弾テロの疑いがあるとか。これから強制捜査に乗り出すにしても、手勢が足りない。戦力のあてとして、峰良太（PC1）のことを不意に口にしてしまう遠藤あてみ（PC2）。彼女としては、良太には日常に戻って欲しかった。だが城山支部長は、正論をもって良太を引きずり出そうとする。いつの間にか現れたユウ（PC4）にも説得され、遠藤あてみ（PC2）は事情をメールで送ったのだった。

■志賀清美と“ユア・フレンド”ユウ
「君はどうするつもりだい？」
「もし、暴走したら……止めてください」
「もう少しゆっくり話が出来たらよかったんだけど」
「いえ、聞いてくれてありがとう…」

＄クライマックスフェイズ
■救命病棟24時
　K市総合病院にUGNが強制捜査に入った。進藤医師と原田看護師を問い詰める。未認可の薬を使用していたことは認めたものの、それで救える命があるなら使うことは厭わないと言う。例え、化け物になる者が居たとしても。望まずオーヴァードになる者への想い、この一点において、だが最大のすれ違いがここだった。痺れを切らしたのはどちらだったか。遠藤あてみ（PC2）の使った《ワーディング》がトリガーとなった。気付けば、病室で寝ていた患者“だった”ジャームたちに囲まれていた。
　城山支部長とUGN戦闘部隊（日本支部からの応援）が患者たちを引き付け、PCたち5人VS“ブラッディロード”＋“薔薇の魔女”かと思われたが、“クラリス”志賀清美も暴走しジャーム化してしまう。
　薔薇の魔女が作り出す茨に絡めとられ、あるいは“クラリス”の爪がPCたちを引き裂く。遠藤あてみ（PC2）の二挺のショットガンが火を噴き、蔵木秘愛子（PC3）によって重力に捻じ曲げられた光が収束し、彼らを焼く。しかし、“ブラッディロード”の《癒しの水》が傷ついた3人を癒してしまう。遠野ユウ（PC4）の導きの下、峰良太（PC1）の爪がようやく医師に止めを刺した。

＄エンディングフェイズ
■遠野ユウ（PC4）
　事件の顛末に心を痛めるユウ、思い出しながら一人ごちる。そのとき、ラジオからノイズと共に自分に似通った声が聞こえてきた。「君は無力だね。僕が誰かって。もうすぐ会えるだろうね」

■蔵木秘愛子（PC3）
　暗い部屋で上司に事件と任務遂行が不可能だったことを報告する秘愛子。平歯重工は今回のことで秘愛子に失望をおぼえたのかもしれない。家に帰ると夫、真砂敬次が土産の魚を捌いていた。そんなことを気にせず抱きついてしまう秘愛子、夫とのラブラブっぷりは外では見せられない、そんなことを考える余裕も無く夜は更けていく。

■遠藤あてみ（PC2）
　城山支部長と２人だけになってしまったK市支部。今後の方針として、デパートの爆破テロを調べることに。手勢の補充・管理対象として良太の引き留めも任せられる。明日からも忙しくなりそうだ。

■峰良太（PC1）
　強制捜査の翌日、戦闘の疲れからか起きた時刻は遅かった。兄の大地は既に出掛けたようだった。部屋の扉にメモが挟まっていた。そのURLを入力すると「真夜中の翼」に繋がる。動画のタイトルは『高校生vs熊＆虎』、峰良太自身が変身する姿が映っていた。「俺の弟が化け物だとは知らなかった」という兄のメールが残されていた。その動画を見終わった頃に、突然の連絡が。遠藤あてみから「UGNに来てください」と。

＄GMコメント
　キャンペーン第１話ということで、日常から非日常に巻き込まれる「ダブルクロス」らしい展開を目指しました。敵役は、かつて単発セッションで「善人のジャームはいないのか？」と問われて考え、良い目的のために手段を選ばなくなってしまった人間として登場。ときどき鳩が飛ぶのは、映画監督ジョン・ウーの影響でもありますが、今後の伏線ということで。余談ですが、「真夜中の翼」「鳩は夜に飛ぶ」は妖魔夜行の小説タイトルでもあります。

【トレーラー】
日常は破られた。少年の異形の姿がネット上で晒され、UGNにも魔の手が迫る。全てのオーヴァードを憎悪するレネゲイドハンターがUGNを狩ろうとする。そんな中で、高校生のための非日常、文化祭が始まる。だが、それこそがテロリストの格好の標的だ。せめて、目の届く範囲の人だけでも守らないと。
『ダブルクロス The 3rd Edition』　第２話「万聖節前夜に星が輝く」
ダブルクロスーそれは裏切りを意味する言葉。

NPC台詞「腹腹時計だと。そんなダブルクロスらしくない名前で呼ぶな！」
NPC台詞「トリック・オア・トリート」
NPC台詞「本当の支援エフェクトというものを見せてあげよう」

第２話「万聖節前夜に星が輝く」