第４話「憎しみが呼ぶ対決」

＄オープニングフェイズ
■事態はいろいろ大変なことに
　前回の事件が終わり、遠藤あてみ（元PC2）がジャーム化してから数か月。このわずかな時間で世界の様相はがらりと変わっていた。あてみは「Nonovered Genocide Union」略してNGU（日本語なら人類抹殺機関）を結成。冗談のようなネーミングだが、UGNやFHから相当数の離反者が合流し、一勢力として台頭し始めた。冒頭のマスターシーンではあてみの周囲に幹部怪人らしいオーヴァードすらはべっていた。どうやらあてみの父、遠藤貴夫博士はあてみの覚醒に備えて前々から準備をしていたらしい。
　そして、非オーヴァードへの宣戦布告が行われ、人類抹殺計画が開始される。しかしながらUGNの対応は相変わらず後手後手に回っており、あてみの宣戦布告に関する情報操作すらおぼつかず、各地の支部に対する襲撃に備えるだけで精一杯、という状況だった。

■父との訣別
　蔵木秘愛子（PC3）は久方ぶりに再会した父、蔵木誠造を家に連れ帰ったが、そのことを夫、真砂敬次によって平歯重工に報告されてしまう。以前から蔵木誠造の行方を追っていた平歯重工は、誠造を引き渡すよう求める。真砂敬次も平歯重工の方針に賛成らしい、というより誠造の動向を探るために八幡グループ側が蔵木秘愛子（PC3）の周囲に配置した人間の一人であることが発覚する。この事実に秘愛子（PC3）は衝撃を受けるも、やはり敬次への愛情を振り切ることはできず、また、誠造を助けて会社から逃げようとしても、犯罪者として警察からも追われる身である誠造を連れての逃亡に希望を見出すこともできず、会社（平歯重工）の求めにしたがって身柄を引き渡してしまう。
ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。

■民俗学者からの警告
　遠野ユウ（PC4）は日本を股にかけた寺社仏閣めぐりを行っていた。遠野ユウ（PC4）は、遠藤あてみを止めると意気込んだものの、UGNの捜査網からも逃れるNGUの動きをつかむことができていなかった。その間に、「わだつみ城」からの脱出時に行った雷獣との共生がきっかけとなってオーヴァードとして覚醒した小此木博士から、世界各地で古代に神と呼ばれていた存在が目覚めつつあること、それは現生人類にとって大きな脅威となりうることを教えられ、手がかりなくそこらじゅうをうろつくよりは、ということで神話や伝承とかかわりの深そうな古墳、遺跡等をめぐっていたのだった。

■新たなUGNチルドレンの決意
　今回からPCとなった遠藤いすか（PC2）は、あてみの宣戦布告の後、UGN日本支部長霧谷雄吾から、遠藤あてみの任務の引き継ぎ、すなわち峰良太（PC1）の監視と、その身辺で行われるNGUの活動への対処を命じられる。遠藤あてみのクローンとして作成され、失敗作として父である遠藤貴夫に捨てられた過去を持ついすか（PC2）は、これを機に、ただ一人父に愛されていたあてみを葬り去ることを決意する（UG日本支部は現場のスタンドプレーを容認、というよりも期待している節があり、UGN全体の方針とは関係なく動くことが可能だった）。

■神との邂逅
　山住家に協力することを決めた峰良太（PC1）は、前回の舞台となった千葉県Ｙ市から長野県H市に移動し、山住家の屋敷に部屋を与えられ、訓練を受けていた。ある日、山住朱子から、古墳の地下にある、３ｍちかい石棺と、その中に納められた角の生えた人形の石像を見せられ、彼女らの奉ずる神についての説明を受ける。彼女らのあがめる神の名はガイボルト。日本土着の古い神であり、石棺に納められた石像はガイボルトの肉体であるのだという。峰良太（PC1）は、どこか自分に似た顔の石像に、戦慄を覚える。そして、神と邂逅したことにより、Dロイス「対抗種」の能力に覚醒した。

＄ミドルフェイズ
■新キャラ登場、しかし信用度ゼロ!?
　それからさらに時間が経って、訓練中にあてみの宣戦布告を聞いた峰（PC1）は動揺する間もなく、NGUの戦闘員から襲撃を受ける。複数の銃器を使いこなす彼らに苦戦するものの、訓練用に従者を放っていた山住朱子や丁度接触を図ろうとしていた遠藤いすか（PC2）の助力もあって、なんとか撃退する。峰良太（PC1）は、前回までの事件を通してUGNに不信感を持っていたが、あてみを止めるためには戦力が必要ということで、遠藤いすか（PC2）と協力することに同意する。半信半疑の峰良太（PC1）に対して、今回の事件での自分の働きを見て、信用するかどうか決めてほしいといういすか（PC2）。しかし、NGUの戦闘員に攻撃を一発も命中させられなかったり、いきなりあてみを殺したいとぶっちゃけて、まだ遠藤あてみへの友情を残していた峰良太（PC1）の不興をかったりと、信用度は低目から始まるのであった。

■甦ったサイボーグ戦士
　NGUを止めようと動き始めたところに、蔵木秘愛子（PC3）、遠野ユウ（PC4）が合流してくる。二人はそれぞれにNGUを止める動機を得ていた。
　秘愛子（PC3）は、父を会社に引き渡してしまったことを後ろめたく思いつつも、残されたマイクロフィルムに記された情報から、古代の神に関わる遺跡を発見した。そこに眠っていた遺産を手に入れて、その半分を契約通り探偵Bに渡した。秘愛子（PC3）は秘宝の中に勾玉を見つけて、新たな能力Dロイス「超侵蝕」を手に入れた。
　そうしていると、秘愛子（PC3）は平歯重工から、戦闘訓練中のサイボーグ部隊がNGUに装備、人員一式丸ごと奪われたというの連絡を受けた。さらには、そのサイボーグ部隊の隊長は、第２話で死んだはずの山希鉄雄であるらしいという。平歯重工の技術の悪用と、山希鉄雄の凶行は止めねばならない、秘愛子（PC3）はそう決意したのだった。

■妖怪は人の想いで存在するのだから
　一方ユウ（PC4）は自分と同じ実験で生み出された弟分、内原ゴウからNGU打倒に協力してほしい、という打診を受けていたのだった。二人とも人間の生み出した都市伝説から生まれた存在、となれば人間がいなくなれば存在できない。いくら人間が憎みあったり苦しんだりすることを存在意義としているゴウも、それは困る、ということであった。（なにかダブルクロスではなく百鬼夜翔をやっている気分になりつつも）自分も同じことを考えていた、と、ユウ（PC4）はゴウとの協力に同意したのだった。

■いわゆる努力、友情、勝利ってやつですか？
　PC達は、手分けしてNGUに関する情報収集と、協力してくれそうな人員の確保に奔走する。その結果何人もの有力なオーヴァードの協力を取り付けることに成功した。山住朱子、UGNエージェント“デュランダル”藤原崇、ゼノスの戦闘員“ミネルヴァ”坂月那岐、小此木博士、探偵Bが助っ人として加勢してくれることになった。ゴウとあわせて６人の味方を得た。
　NGUの幹部怪人は「七聖剣」と呼ばれる７人であることも判明した。その陣容は、
洗脳と勧誘を得意とする“ダークナイト”黒河雅人
父親以上の重力使い“Dragon Lord”キャプテン・クルス
セイレンの魔女“ラインゴルト”ローラ
看護師の妹“ジルベルローゼ”原田美樹
スナイパー“死角なきドラグノフ”
鉄壁の防御“キャッスル・シュタイン”
洗脳されたサイボーグ戦士“Forget memory”ビショップ
さらにはファランクスやポーンと呼ばれる一般兵部隊もいる。拠点は天空を行く「黒船」竜王丸である。

　また、NGUは千葉県Y市や「腹腹時計」事件の起きた東京近郊S市など、遠藤あてみにゆかりのある土地を中心に襲撃を行っており、次に狙われるのは、峰良太（PC1）の故郷であり、遠藤あてみも一時期滞在していた奈良県K市であろうという推測も立てられた。レネゲイドの力で生み出した、黒船と呼ばれる飛空船を拠点とし、神出鬼没の活動を続けるNGUを倒すためには、その襲撃を待ち伏せ、撃退するほかない。PC達はそう結論付け、K市へと向かうことにした。

＄クライマックスフェイズ
■データを把握した最悪の敵との戦い
　読み通り、K市の八雲学園学園上空に現われる黒船。PC達は協力を取り付けたNPCや、秘愛子（PC3）が手に入れた遺産の力をかりて、NGUを迎え撃つ。PC達のデータを把握しているダブルショット（あてみ）の指揮のもと、数と距離を武器に猛攻を仕掛けてくるNGU。４人しかいないPC達に、５エンゲージ、配下のトループも合わせて９体で猛攻をかけてくるＮＧＵはまさに外道（相手の幹部怪人「七聖剣」のうち５人は味方のNPCと戦っているので、これでも減ったほうなのだ）。
　しかも、首領であるダブルショット（あてみ）は、機動力の低いパワーファイターである峰良太（PC1）の攻撃力を警戒して、戦闘ヘリに搭乗し、大きく距離をとって戦っていた。敵に操られていた“Forget memory”ビショップこと山希鉄雄の洗脳を解いて救い出したものの、状況は不利。PC達の間に敗戦ムードが漂い始めたころ、一騎のバイクが峰良太（PC1）のもとに、自走して現われる。
　実は、情報収集の最中に、峰良太（PC1）は不思議な邂逅を果たしていた。かつてないほど強大な敵との戦いに死を覚悟し、亡くなった兄、峰大地を偲んでいた時に、ひとりでにテレビの電源が入り、峰大地の顔が映し出されたのだ。驚く良太（PC1）に、テレビに映った大地は「自分は大地そのものではないが、お前を見守っている。本当に危機に陥ったときは助けに行く」と告げた。
　そのときの約束どおりに現われたバイク、その名も「ガイア・ストライダー」の機動力に助けられて、峰良太（PC1）はついにダブルショット（あてみ）を倒すことができた。他の場所に散って七聖剣と戦っていたNPCたちも、犠牲者は出したものの勝利を収め、NGUとの戦いはPC達の勝利に終わった。

■神の降臨
　これで一安心とPC達が一息つこうとしたところ、上空で停止していた黒船が突如動き始め、いかにもレーザーを撃ちそうな気配を発する。実は七聖剣のうち１人が出撃せずに待機しており、こうなったら、と無差別攻撃に出ようとしていたのだ。その様子から察するに、もし発射されればK市壊滅は免れない。
　だが、レーザーを発射しそうな黒船の前に、突然謎の人影が現われる。その人影が軽く身振りをおこなうと、黒船にすさまじい雷が直撃し、木っ端微塵に粉砕してしまう。あっけに取られるPC達。しかし街からは、その力を目にした人々の「神だ！」「神が俺たちを助けてくれた！」という声が響いていた。

＄エンディングフェイズ
■事態はクライマックス（最終回）に続く
　峰良太（PC1）は、NGUとの決戦の後、戦闘中に現われたバイク「ガイア・ストライダー」は自分のために山住家が用意していた特注のバイクに死んだ兄大地の意識がレネゲイドの力によって乗り移ったものであること、黒船を破壊したのは復活したガイボルトであることを山住朱子から教えられる。NGU打倒に協力する条件としてガイボルトへの忠誠を求められていた峰良太（PC1）は山住朱子と共にガイボルトに仕えることに同意するも、不吉な予感を感じていた。

　秘愛子（PC3）は平歯重工に戻って今回の事件について報告し、今後の方針を上司から伝えられた。山住家は八幡グループの最大手のスポンサーの一つであり、以後、山住家のプランである「神による統治」という世界像に沿った展開をしていくとのことだった。神による支配というという言葉に受け入れられないものを感じつつも、夫との関係もあり、それを承服する秘愛子（PC3）であった。

　遠野ユウ（PC4）は、ゴウや、神の力を目の当たりにして意気阻喪している小此木博士らと話し、自分のスタンスを再確認した。神の支配が悪しきものだと決め付けることはできないが、もし、平和に生きている人々に害をなすならば、それを止めねばならない。自分と同じように人間に依存して生きているゴウに協力するよう求めつつ、改めて決意を固めるのであった。

　遠藤いすか（PC2）はUGN日本支部に報告に戻っていた。そこで日本支部長の霧谷から、神の存在の危険性や、峰良太（PC1）が神の末裔であることを告げられ、監視の続行と、万一の場合の抹殺の指令が改めて与えられた。あてみが死んで業の晴れた遠藤いすか（PC2）は本来の冷静さを取り戻し、落ち着いて任務を受けるのであった。

＄GMコメント
　キャンペーン開始時の想定と大きく異なったのが、この第４話でした。PCのジャーム化、リタイアはルールで規定されているとはいえ、実際に起こるとシナリオの軌道修正に焦りました。前回までのセッション中でプレイヤーが言っていた「数と射程」を重視する敵ということで、自分の傾向とは異なる敵データを出せたのは意図せぬ幸運でした。しかし、エンディングの展開は峰良太（PC1）が神に忠誠を誓うし、蔵木秘愛子（PC3）は会社に忠実だし、第５話は本当にPC戦闘になるか、と心配でした。

【トレーラー】
神が降臨し、少年は英雄になった。神に従えば幸福になれるだろう。だが、本当にそれでいいのかと、地獄の使者、暗き亡霊が問いかける。誰のために戦っているのか、レネゲイドという十字架を背負う覚悟はあるか。立ち向かうべき敵を見極め、仲間を信じて魂を燃やせ。明日の夜明けを告げる鐘を鳴らしたなら、いつかは花も咲くだろう。
『ダブルクロス The 3rd Edition』　第５話「トライ・クロス・ファイト」
ダブルクロスーそれは裏切りを意味する言葉。

第５話「トライ・クロス・ファイト」