第３話「太平洋、涙色に染めて」

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■偽者が出れば一流のヒーローさ
　遠野ユウ（PC4）が旅立ちの準備をしている途中、来客がある。強いものがいるところに行く者、その名もミネルヴァ。協力型レネゲイドビーイングである彼女とユウはひさしぶりに言葉をかわす。
「そういえば、ユウ。君は最近Ｙ市に行ったか？」
　ふとミネルヴァはユウ（PC4）に尋ねる。どうやらミネルヴァは一週間ほど前にユウ（PC4）と良く似た人物に遭遇していたらしい。しかし当然、そのような覚えは無い。
「僕のコスプレかな？僕も有名人になったものだ。」ユウ（PC4）は笑ってそう返すのだった。
　シーン終了時、ユウ（PC4）に何者からエネミー専用エフェクト《疑心暗鬼》がかけられる。信用が失墜し、コネクションを使えなくなったのであった。

■兄の形見
　前回の事件で自分の住んでいた町を追われることになった峰一家。峰良太（PC1）は両親とともにユウ（PC4）の用意してくれた隠れ家に引っ越すために荷物をまとめていた。その際、良太（PC1）は両親から兄、大地が大切にしていたらしい小箱を渡される。開けてみると、その中には勾玉のようなものが入っていた。
「なぜ兄さんはこんなものを……？」
　疑問に思いながらも、良太（PC1）はその小箱を自分の荷物のところにしまうのだった。大体の整理が終わったところで、山住朱子から連絡が入る。どうやら今現在実家の方が立て込んでいるらしく千葉県Ｙ市にある別荘の方に来て欲しいとのことであった。「お友達もご一緒に」という山住朱子の言葉どおり、別荘に向かうべく再び準備にとりかかるのだった。
＃勾玉を使えばDロイス「対抗種」に覚醒するという布石のつもりだったのだが。実際には、Dロイスの取得は次回へと延期されたのであった。

■知らない母
　同じく、Ｋ市を追われることになった遠藤あてみ（PC2）は、学校の寄宿舎の荷物を素早く片付けたのち出発の時まで身を潜めることになる。その最中、遠藤あてみ（PC2）は母親のことを思い返していた。今思えば、母親が列車爆破テロで死んだこと以外は知らされていない。こうして、母親のことを考えるうちに夜は過ぎていくのだった。

■父親の消息
　先日の事件における城戸涼平の死。消息のつかめない師匠の行方。蔵木秘愛子（PC3）にとって最近はショックなことが続きすぎた。帰宅するなり愛する夫の胸で「泣いていたいの」と一晩中、彼女はひっそりと泣き続けた。いつの間にか疲れて寝てしまっていたらしい。翌朝、居間に下りるとそこにはいつものように夫の姿があった。夫と話している最中に「私、ナーバスになっていたみたい……」と秘愛子（PC3）は漏らす。それを聞いた夫の「休暇でもとったらどうだ？」というアドバイスを受けて、秘愛子（PC3）は有給休暇届けを提出するために会社へと赴くのであった。

　会社への道中。どこからともなく聞こえてくる口笛。そちらのほうを見遣るとそこには探偵Bの姿が。「あら、頼んでいた仕事はもう終わったのかしら」という秘愛子（PC3）の問に「ウチは迅速がモットーなんでね」と彼は返す。探偵Bの調査によれば、蔵木誠造は千葉県Y市の沖にあるFHの研究所「わだつみ城」に捕らえられているらしい。加えて探偵Bは、その研究所の所長である来栖博士は相当な重力使いであるから気をつけろと忠告する。「この調査の報酬は君の父親を助けられた時でいい。君の父親の所有する秘密財宝の半分を報酬としていただくことにするよ」
　その後、秘愛子（PC3）は当初の目的であった会社へとそのまま向かう。上司の上田に有給休暇届けを出したところ、上田はすんなりと休暇を許可してくれたのだった。

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■三つの未来図
　峰良太（PC1）がこれからＫ市を離れることになると考えながら、仲間たちを待っていると程なくして皆集合した。峰良太（PC1）が山住朱子の言っていた事を遠藤あてみ（PC2）たちに伝えると、早速Y市にある山住家の別荘へと向かうことになる。
　何事もなく別荘へ到着、執事に案内されて応接間へと通される。そこには山住家当主の山住鋼造と山住三姉妹の姿があった。
「君が良太君か、なかなか見所がありそうだ。」
山住鋼造は峰良太（PC1）を見てそう言う。そのまま一行の顔を見渡し、遠藤あてみ（PC2）の顔を見た時に、山住鋼造はふと驚いたような表情をみせる。どうやら遠藤あてみ（PC2）の母親は山住鋼造の妻の妹であるらしい。母のことを知っているのなら父のことも……！　遠藤あてみ（PC2）は山住鋼造に父親の事を尋ねる。すると驚くことに遠藤貴夫も沖にあるFHの研究所にいるとのこと。しかし、話を聞いてみると山住鋼造はあんまり遠藤貴夫のことをよく思っていない様子。山住鋼造にとっては、FHに行ってしまうような遠藤貴夫は軽蔑すべき対象としか写らなかったのであろう。遠藤貴夫のことを貶す山住鋼造であったが、そんな彼に遠藤あてみ（PC2）は父を助ける旨を顕にするのだった。

山住鋼造と会話して、以下のような情報を得られた。
・山住鋼造はレネゲイドビーイングにも精通しているようで、さらには遠野ユウ（PC4）の存在を知っていた。そして彼はレネゲイドビーイングを妖怪と形容していた。
・山住家は代々神に仕えている。直系のものは最近ではほぼ全員オーヴァードとしての力を発症しているらしい。加えると山住三姉妹も相当な能力の所有者であるらしい。
・Y市沖にあるFHの研究所わだつみ城は消えたり現れたりするという摩訶不思議な現象により難攻不落の城と化してしまっているらしい。加えて小此木博士が民俗学のフィールドワークの最中、FHに捕まり「わだつみ城」に捕らえられているらしい。
・件の悪意あるサイト「真夜中の翼」と管理人ナイトピジョンはFHの一種の実験であり、管理しているサーバーを潰すことにより奴の活動を止めることができる。加えて、そのサーバーがどこに存在しているのか普通に調べても分からないということはFHの拠点である「わだつみ城」にそのサーバーがある可能性が高い。
・遠野ユウ（PC4）に似た人物について。どうやら姿かたちはそっくりであるが、肌の色が黒という男が存在している。その黒い人物は人々にねじまげたアドバイス（引きこもっちゃえ、とか）をして回っているらしい。

　情報を話した後で、山住鋼造は「ところで、君はUGNに所属しているんだったね」と遠藤あてみ（PC2）に尋ね、そして続ける。「私はUGNを危険視している」と。山住鋼造の言葉によれば、UGNが一般人とオーヴァードを引き離していることに関して、これが極端化すれば世界は管理社会化していってしまう危険性があるとの事であった。もちろん、山住鋼造はFHを支持しているワケではない。FHのやり方が万延すれば世界は混沌に包まれてしまうことには彼にも分かっていたからであった。
　山住鋼造は言う「今必要とされているのは神の元に平等な世界を創ることである」と。即ち、強大な力を持ったオーヴァードを神とし、その下にオーヴァード、さらにその下に力なき一般人というヒエラルキーを築く必要があるというのだ。「ぜひ良太君には我々に協力してほしい」ひととおり説明を終えると、山住鋼造は峰良太（PC1）の方を向きそう言った。どうやら峰良太（PC1）には神殺しという力が宿っているらしく、それが神の下の平等な世界の創造に必要なようであった。しかし、すぐに返事ができるわけも無く峰良太（PC1）は押し黙ってしまう。
「まぁ、すぐに返事はしなくていい。ゆっくり考えてから返事をしてくれ」

（第３話プレイヤー用資料の図を参照）

■秘密基地の情報入手
　ともかく、皆の当初の目的を達成するためには「わだつみ城」に赴く必要がある。城を攻め落とす準備を行うことにした。遠藤あてみ（PC2）がUGNの人脈を駆使して、今現在、遠藤貴夫がどのような研究を行っているのかを調べることに成功する。基本的には遠藤貴夫の研究方針は今も昔も変わらないらしい。神の末裔とされるモノを手に入れて、それをベースにして超生命体を作る研究をしているらしい（具体的には100倍の重力下で育成することによる肉体強化等）。

　遠藤貴夫に関する情報があらかた集まったところでノイマンである遠藤あてみ（PC2）の人類を超越した脳が閃きを見せる。エフェクト《インスピレーション》を使用して、秘密基地の情報を入手した。
・「わだつみ城」はランダム生成ダンジョンである。
・来栖博士の手によって内部構造を自在に組みかえることが可能である（バロール、オルクス能力の応用）。
・最終目的地である司令室へは、ある情報を得ないと行くことができない。
・バイオ研究室では遠藤貴夫が生命体の研究をしている。
・コンピュータルームでは民俗学者である小此木博士が研究をしている。
・地下牢には蔵木誠造が捕らえられている。
・周辺の警戒はザル。島にはヘリポートがある。また、浜もあるためボート等での接岸も可能。
・ある程度研究所の内部構成が分かった（25枚のうち６マス分のカードを、侵入前にオープンできる）。

以上のことが一瞬のうちに遠藤あてみ（PC2）の脳内を駆け巡った。島に行く手段としてはモーターボートが適切であることを把握する。

■悪意の都市伝説
　遠野ユウ（PC4）は、自分の弟のような存在である内原ゴウについて調べた。ユウ（PC4）の情報収集能力は伊達ではない、彼の調査によって以下のことが分かった。
・内原ゴウはブラックドッグ／オルクス／ノイマンのトライブリードであり、監視カメラを介して対象を監視したり、鳩を使ったりできる。
・彼は人に悪意のあるアドバイスをしたり、変身型のオーヴァードの姿を撮影してネットに公開するなど人と人との絆を断ち切る活動をしているらしい。人の心を憎悪に満たすことを得意としている。
・遠野ユウ（PC4）と同様に直接戦闘能力は低い。
・通常の方法で殺すことはできない。殺す方法は一つ存在するらしいが、それには大きな犠牲が伴うとのこと。

　一通り情報収集を終えた遠野ユウ（PC4）は敵地に赴くための準備を整える。モーターボート、応急手当キット、防具などなど。この時、スナイパーライフルの調達にも成功したので、遠藤あてみ（PC2）はショットガンに加え、ライフルも扱うことになるのであった。

■秘密基地に侵入
　準備は整った。一行はさっそく「わだつみ城」を目指す。せっかくの門出（？）だというのに天候はすこぶる悪い。しかし、運良く何事もなく孤島に到着した。来栖博士の能力によって巧妙に隠されてはいたが、優秀なオーヴァードである遠藤あてみ（PC2）、蔵木秘愛子（PC3）、遠野ユウ（PC4）の目を誤魔化すことはできなかった。

　上陸することに成功した一行。オルクスのシンドロームを持つ遠野ユウ（PC4）は上陸した途端、この島全体が来栖博士の領域であることを察知する。しかし、立ち止まるわけにはいかない。立ち止まることなく研究所へと向かっていく。その道中には障害らしい障害もなかったものの、それはそれだけ相手に余裕があるということなのかもしれない……緊張に襲われながら峰良太（PC1）たちは研究所の中へと入って行くのであった。

■エコ・エネルギールーム
　先ほどの遠藤あてみ（PC2）の超人的直感でエネルギールームと警備員室の場所は分かっているものの、その道中にどのような罠が存在しているとも知れない。あてみ（PC2）と秘愛子（PC3）が先行し、その後を峰良太（PC1）とユウ（PC4）が付いて行く形となる。これまた運良く敵に遭遇することもなく、エネルギールームに到着する。エネルギールームに入ると、人間サイズの猫ともイタチともつかない生き物が鎖で繋がれていて無理やり電力を供給させられていた。自らを雷獣と呼ぶ彼を助け出すことは困難かと思われたが、秘愛子（PC3）とユウ（PC4）が協力することにより無事に助け出すことに成功する。電力供給が断たれ、一瞬電源が落ちるもののすぐに予備電源に切り替わった。
「助けてくれてありがとう……君たちはいったい……？」

　雷獣に尋ねられて各々自己紹介をする一行。ついでに話を聞いてみると、彼は電力を供給するためだけにここに連れてこられていた様子。ユウ（PC4）は自分たちがここに来た理由を話し雷獣に協力を要請するも、彼は憔悴しきっていてとても戦える状態ではないらしい。「しばらく私はここで休んでいるよ……」雷獣はそう言うが、予備電源に切り替わったことにより異常を調べに警備員が此処にやってくることだろう。それを懸念した秘愛子（PC3）は《ディメンジョンゲート》で雷獣を本土に送り返すことを試みるが、移動しようとした瞬間弾き飛ばされて元の場所に戻ってきてしまった。そう、ここは来栖博士の領域、下手すれば脱出できないどころか「壁の中にいる」ことだって在り得るのだ。しかたなく雷獣をユウ（PC4）の能力で隠し、一行はすぐ隣にある警備員室へと赴くのであった。

■警備員室の深きもの
　警備員室に侵入。モニターがずらっと並ぶ警備員室。しかしそこにいた警備員は異形としかいえない……そう、魚と人間のハーフのような奴等（ディープワン）が３体も存在していたのである。おぞましい光景に一行のレネゲイドがざわめく。なんとかその衝動を抑えたものの、休むまもなく警備員達は襲い掛かってくるのであった。相手は所詮警備員。そこまで苦労することなく、退けることに成功する。
　戦いの後、警備員室のモニターを覗き込むと、各部屋の様子が映し出されていた。各部屋の所在も分かった、遠藤あてみ（PC2）は父、遠藤貴夫に会うためバイオ研究室に、蔵木秘愛子（PC3）は父、蔵木誠造に会うために地下牢へ、遠野ユウ（PC4）は小此木博士と内原ゴウと思しき人物がいるコンピュータルームに向かうことになる。峰良太（PC1）は「ナイトピジョン」に関連すると思われるコンピュータルームに行こうとするが、遠野ユウ（PC4）は「これから皆が会いに行く人たちは皆それぞれレネゲイドに対し違う価値観を持っている。これは君がこれからレネゲイドについて判断するために強力な材料になるはずだ。だから誰について行くか慎重に選ぶといい」といった趣旨のことを告げる。峰良太（PC1）は悩んだあげく、「やはり自分から日常を奪う元凶となったナイトピジョンと会いたい」と、ユウ（PC4）について行くことを選択する。

■コンピュータルームでの対話
　ユウ（PC4）と峰良太（PC1）がコンピュータルームに到着すると、そこには小此木博士と内原ゴウと思しき人物がいた。驚く小此木に「よぉ、秀明」と返すユウ（PC4）。しばらく見ない間に成長を果たしたユウ（PC4）に小此木は驚きを隠せないようであった。「小此木博士の助けを求める声が聞こえてきたからやってきた」ということを伝えるユウ（PC4）に対して、小此木は「ここの施設は素晴らしいが、フィールドワークをさせてもらえない。これは民俗学者として駄目だと思うので、脱出の手助けをして欲しい」とのことであった。
「ひさしぶりだね、兄さん」内原ゴウはユウ（PC4）に声をかける。しかし、そこに峰良太（PC1）が割って入り、「お前が俺の日常を奪った張本人か」と問う。「そうさ、僕がナイトピジョンだよ。悪意を流すのが仕事さ」と返すゴウ。見かねたユウ（PC4）が「僕の友達を困らせるのは止めてくれ」と言うも「兄さんを超えるためには、兄さんの友達を困らせるのが一番」とゴウは止める意思は無いことを示す。「そんな理由で人を困らせるのか！」とゴウに突っかかる峰良太（PC1）であったが、ゴウは峰良太（PC1）に対して「お前は人間じゃない」「お前だって医者を殺したんじゃないか」と言葉攻めにし、黙らせる。ユウ（PC4）は峰良太（PC1）をフォローする形でゴウに反論するも、ゴウは「だいたい兄さんの言いたいことは分かった」と言い残し消えてしまう。
　ユウ（PC4）の“ユア・フレンド”としての能力の高さに感嘆の声を漏らす小此木博士。それと同時に「ノウは何処に行ってしまったのか」とこぼす。どうやらユウ（PC4）の兄貴分であるノウのオリジナルが現在行方不明になっているとのこと。さらにノウのクローン体が平歯重工で生産されているとのこと。困った表情を見せていた小此木であったが、ユウ（PC4）は「それは自業自得なんじゃないかな」と返すのであった。

■バイオ研究室で再会する親娘
　父のいるバイオ研究室の扉を開ける遠藤あてみ（PC2）。「父さん！あてみです！！」と言うも、「おお……見ろ！お前の妹たちだ！」と培養槽を指差す遠藤貴夫。「これは何？」というあてみ（PC2）の問に対して「人類抹殺計画のための礎だ」と返す。さらに「UGNは駄目だな、人類を滅ぼす研究をしていたら追放されちゃった。FHはいい…、私の研究に協力してくれる。おかげでこのような素晴らしいものができた」と続ける。その背後の大水槽では巨大な触手がうごめいていた。あまりにおぞましい光景にあてみ（PC2）は狼狽する。なんとか遠藤貴夫を説得しようとするも、てこでも動きそうではない。こんなのが父のはずがない……そう信じてやまないあてみ（PC2）は、遠藤貴夫はちょっと頭がおかしくなってしまっているだけなんだという結論にたどり着く。説得は無理だと判断したあてみ（PC2）は遠藤貴夫の腹に一発入れて気絶させてから連れて行くことを決断する。しかし、その時異変が起こった。気絶している遠藤貴夫の顔を見ていると、頭の中で「そいつは人間だ、殺せ」という声が響く。気が付くと、そこには腹に散弾銃を喰らった遠藤貴夫の姿が。あてみ（PC2）の手にはショットガン。気絶させられていた遠藤貴夫は撃たれたときのショックで目を覚ましたのか、死に際にこう言った。「人類抹殺計画は確実に進行しているようだ……ハハハハハハ！！」

※遠藤あてみ（PC2）はＤロイス「戦闘用人格」を手に入れた！
※どうやら、プレイヤ−は前々から遠藤貴夫を殺すというシーンをやりたかったそうです。
＃この展開にGMは唖然としました。どのみち、遠藤貴夫は暴走したモンスターに殺される予定でしたが。同じ作られし存在でも、PCが殺すのとNPCが殺すのでは違います。

■地下牢の闘士
　地下牢につながれている男、それは秘愛子（PC3）の父、蔵木誠造に他ならなかった。「父さん！こんな形で再開することになるなんて！」牢にしがみつく秘愛子（PC3）。それに対し、驚きながらも「大きくなったな」と返す蔵木誠造。秘愛子（PC3）は父に「何故こんなことに……」と聞くも、口をつぐんでしまう蔵木誠造。しかし秘愛子（PC3）は誠造がプラムファームの一員だということを知っている。それを含めてすべてを聞きたいという旨を伝えると、蔵木誠造は口を開き今までのことを謝るかのように、過去を語るのだった。
　それを聞きながら、父の捕らえられている牢を《黒の鉄槌》で破る秘愛子（PC3）。それを見た蔵木誠造は「お前も神の力を手に入れたのか……」とつぶやく。そして続ける、日本にはオーヴァードとしての力を神の力として裏で全てを牛耳っている存在があるということを。あの爆破テロはその一族である山住を狙ったもので、一般人を巻き込むつもりはなかったのだと。「山住は恐ろしい一族だ……しかし、奴等から盗んだ情報は守り抜いた、そうお前の中に……」蔵木誠造に言われ、いつも身に着けていたロケット（思い出の品）を開く秘愛子（PC3）。今まで気付かなかったが、そこにはマイクロフィルムが埋め込まれていたのだった。もし、マイクロフィルムのことがばれれば秘愛子（PC3）の身にも危険が及ぶかもしれない。その想いが彼があれだけの拷問にも屈しなかった所以であった。それを聞き、思わず涙ぐんでしまう秘愛子（PC3）であった。
　その時、ガクンと体が下がる感覚がする。「またか……」誠造は口を開く、彼によればこの「わだつみ城」は海底に潜ることや天空に飛ぶことができ、それゆえに難攻不落とされているとのことであった。秘愛子（PC3）は一刻も早く誠造を病院に連れて行きたかったが、来栖博士の領域によって《ディメンジョンゲート》は封じられている上に海底となっては脱出のしようがない。とにかく父に応急手当を施してから、峰良太（PC1）達と合流することにしたのだった。

■合流、そして不信感
　合流して司令室へと赴くことに。ユウ（PC4）は秘愛子（PC3）の連れてきた蔵木誠造を領域で隠す。その際、蔵木誠造は峰良太（PC1）のほうを見て「君には力のようなものを感じる……もし、君が勾玉のようなものを持っているのなら見てみるといい」と伝える。

　そこに青い顔をした遠藤あてみ（PC2）が現れる。一応、返り血を拭き取っていたが、キュマイラ故に敏感な嗅覚を持つ峰良太（PC1）は、あてみ（PC2）から先ほどの警備員のものではない、さらに言うなら人間の血の匂いを感じとる。当然、峰良太（PC1）はそのことについて言及するが、あてみ（PC2）は答えることを躊躇する。そこでユウ（PC4）は「話したいなら話せ。そうでないなら、とにかく今は青い顔をしている場合じゃない」と言う。ユウ（PC4）に促されたことにより、あてみ（PC2）は重い口を開き、すべてを語る。貴夫を殺したこと、自分が人類抹殺計画のために作られたということ。しかし、そのような事をいきなり打ち明けられたところで一介の高校生が素直に受け止められるわけがなかった。「あてみさんには、やっぱりそんな秘密が……」、峰良太（PC1）はあてみ（PC2）に不信感を募らせるのであった。

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■司令室、ブラックダイアモンド魔界空間
　我々に立ち止まることは許されない。あてみ（PC2）のことは保留しておいて、皆は司令室へと突入する。そこには、予想したとおり来栖重蔵博士が待っていた。来栖博士は秘愛子（PC3）に「真の重力使いの技を見せてやろう」と言葉を交わした後、バイオ研究所にいたクラーケンを《ディメンジョンゲート》で呼び出す。クラーケンが咆哮を上げることにより、あてみ（PC2）はレネゲイドの衝動に耐え切れず暴走状態に陥ってしまう。一行がクラーケンのおぞましい姿に圧倒されているところに「遅れてゴメーン、兄貴」とゴウが現れる。ユウ（PC4）は「僕達が争う意味はない」とゴウに戦うことを止めるよう説得を試みるが、ゴウの態度は先ほどと変わることは無かった。「さあ、どちらが強いのかみせてもらおうか！」来栖重蔵博士の声によって、戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

　来栖重蔵博士の構築した特殊な空間の中で、クラーケンが《巨神獣化》して10m程度の怪物となった。クラーケンはその見た目どおり攻撃型の敵で、とにかく一撃が怖いといった印象。では来栖重蔵博士はどうだったかというと、博士も継続エフェクトの効果を消し去る《ファストフォワード》やリアクション不能の《黒星粉砕》といういやな攻撃をしてきた。内原ゴウは相手を妨害する能力に長けていた。《ハザードコール》で侵食率を10％上昇させたり、《ブリッツクリーク》でクラーケンを再行動させたり、トリッキーな攻撃でPCを苦しめる。さらにはEロイス「憎しみの楔」でロイスをタイタスに変えた後、《ナーブジャック》で遠藤あてみ（PC2）のコントロールを奪い、峰良太（PC1）を攻撃させた。
＃後から振り返ると、ゴウのこの２つの技があてみの侵蝕率への負担が一番大きかったと思える。

　峰良太（PC1）たちは苦戦しつつも、なんとかクラーケンと来栖重蔵博士を撃破することに成功した。それを見たゴウは「あーあ、来栖博士が死んじゃった。今日は兄さんたちの勝ちということにしておくよ。そうだ、兄さん、僕に勝った景品にいいことを教えてあげるよ。来栖博士が死んじゃったから、この研究所は崩壊するから。じゃーね」と言いつつ最後に《ハザードコール》攻撃を放って姿を消してしまう。

■冷たい方程式の冴えた解法
　現在、研究所は深海に潜っている。このままでは皆、水圧でつぶされるか溺れ死んでしまうことだろう。そのとき遠藤あてみ（PC2）は《インスピレーション》を使用し、超人的直感で小此木博士なら何か脱出方法を知っているかもしれないという事を閃く。エネルギールームに隠しておいた雷獣を連れ、急いで小此木博士のいるコンピュータルームへと赴く。脱出方法を尋ねると、緊急脱出ポットがあるはずとのこと。しかし、ここで問題が発生した。脱出ポットはすぐに見つかったのだが、その脱出ポットには３人までしか搭乗できなかったのである。脱出すべきは、峰良太（PC1）、遠藤あてみ（PC2）、蔵木秘愛子（PC3）、遠野ユウ（PC4）、小此木博士、蔵木誠造、そして雷獣の７人であった。それに気付いたあてみ（PC2）は「とりあえず巻き込まれる形でここまで来てしまった峰良太（PC1）をまず乗せること」を主張すると共に自分が研究所に残ることを提案する。父、遠藤貴夫を殺してしまった罪をここで償い続けるというのだ。それを聞き、「君は殺してきた人全てにそうやって罪を償っていくつもりなのか」と諌めるユウ（PC4）。あてみ（PC2）はそれでも研究所に残ることを主張し、峰良太（PC1）はそれを必死に止めようとする。
　蔵木誠造は「自分は罪を重ねすぎた。私はここに残るからせめて秘愛子（PC3）だけでも生き残って欲しい」という旨を伝える。それを聞き、秘愛子（PC3）は「そんな……」と蔵木誠造を止めようとするも、誠造の言葉が揺るぐことが無いことを直感的に感じたのか、その後の言葉を続けることができなかった。

　その時、遠藤あてみ（PC2）のノイマンとしての頭脳があることを閃く。レネゲイドビーイングである雷獣は電気回線を伝うことによって逃げれるのではないのかということ、さらに一人くらいなら連れて行くことができるのではないのかという事であった。雷獣にそう伝えたところ、「やったことはないが、なんとかやってみよう」とのこと。雷獣は波長の合った小此木博士と融合し、一緒に電気回線を伝って逃げることにした。
　ミシミシと音をたてる研究所、もう崩壊の時は近いことが伝わってくる。しかし、蔵木誠造が研究所に残るとしても４人のうちの誰かが研究所に残らないといけない。
「僕が残ろう」
声の主はユウ（PC4）であった。彼の主張は、人工衛星からの映像が映し出されているモニターを利用して《縮地》を用いるというものであった。そのような危険な事をさせることに対して気が進まない３人であったが、研究所崩壊まで時間が無いことを考え、ユウ（PC4）に賭けてみることのだった。
「父さん……天国で母さんに謝ってね……」と秘愛子（PC3）は父、誠造に別れを告げる。誠造はそれに対してゆっくりと首肯する。そして秘愛子（PC3）にだけ聞こえるように小声でこう言うのだった「ロケットのマイクロフィルムのことは誰にも言うんじゃないぞ」

　峰良太（PC1）、遠藤あてみ（PC2）、蔵木秘愛子（PC3）は脱出ポットで無事に研究所を脱出した。雷獣と小此木も電気回線から脱出し、残るはユウ（PC4）と蔵木誠造だけになった。蔵木誠造と軽く言葉を交わした後にユウ（PC4）は《縮地》で脱出することを試みる。その時、ユウ（PC4）はあることに気付く、縮地の際には服等の自分の持ち物も同時に移動できるということに。ということは、人間も荷物扱いになるぐらいに生命レベルを低下させれば連れて行くことが可能ではないのかということに。誠造にその旨を伝え、了承を得る。もう、崩壊まで時間が無い、蔵木誠造を仮死状態にし終えるとユウ（PC4）は《縮地》で研究所から脱出したのだった。

＃そんな無茶な理屈あるか、と一瞬思った。そして『サイボーグ009』地下帝国ヨミ編のラストを思い出した。001のテレポートと似たようなもんである。石ノ森章太郎先生が認めているから、この場面でのプレイヤーの妙案も採用すべきだと思った。

■バックトラック
　遠藤あてみ（PC2）がバックトラックに失敗。2倍振り5Dと追加振り3Dで合計25しか下がらず、最終の侵蝕率は103％になった。ジャーム化してしまったのだった。こうダイス目が悪いと、もう運命としか言いようがない。《インスピレーション》での活躍、遠藤貴夫を殺したときのエフェクト使用、ゴウの妨害など侵蝕率が上がった要因はいろいろあったけれど、けっきょくはダイス目だろう。

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■風の中に去って行く
　脱出ポットは無事浮上し、峰良太（PC1）達はＹ市の海岸へとたどり着く。「おーい」という声が聞こえて来たのでそちらを向くと、そこにはユウ（PC4）と蔵木誠造の姿があった。誠造の手当てを求めるユウ（PC4）の声を聞き、駆け寄る峰良太（PC1）と秘愛子（PC3）。しかし、あてみ（PC2）はそこから動くことなく蔵木誠造を見て呟く「……そいつを殺すのはまた今度でいいか」と。あてみ（PC2）の異変に気付いたのか、声をかける秘愛子（PC3）。しかし、あてみ（PC2）は「あてみ？　私は人類抹殺の使徒。名前などない。あるのはDSGというコードネームだけだ」と冷たくあしらう。峰良太（PC1）もあてみ（PC2）に対し「どうしたんだよ、あてみ！」と声を枯らすが、それは意味を持たなかった。

　戸惑う峰良太（PC1）の元に山住朱子が現れる。「見なさい、あれがUGNの本性よ」と言う朱子に対し、「UGNなんて組織と一緒にしないで欲しいわ」とあてみ（PC2）は言い放つ。そのときユウ（PC4）は隙を見て、あてみ（PC2）にメモリダイバーの能力を発動する。一瞬、あてみ（PC2）の表情は和らぎ、彼女の頬を泪が伝った。しかし、すぐ先ほどまでの能面を被ったような表情になり、この場を去っていくのだった。

　あてみ（PC2）が去った後に山住朱子は峰良太（PC1）に「神のもとに統制された世界を創るために協力するかどうか」の意見を聞く。峰良太（PC1）の答えはイエス。兄貴が死んだのも、あてみ（PC2）がジャーム化したのも自分の非力さのせいだ。このようなことを繰り返さないためには強力な後ろ盾を持った上で自分自身が強くならないといけない、というのが峰良太（PC1）の考えだった。それを聞き、父、誠造から山住家の危険性を伝えられていた秘愛子（PC3）はなんとかして峰良太（PC1）を思いとどまらせようとする。しかし、それにより峰良太（PC1）の考えを変えることは叶わなかった。山住についていこうとする峰良太（PC1）にユウ（PC4）は声をかける。「僕は難しいことは分からないけど、友達のためなら力を出し惜しみすることは無い。僕の力が必要になったらいつでも呼んでくれ」と。峰良太（PC1）が頷くのを見てからユウ（PC4）はその場から去っていくのだった。 　峰良太（PC1）も山住朱子と共に去っていき、一人残された秘愛子（PC3）。とにかく父を安全な場所に運ばねば。秘愛子（PC3）は父、誠造を連れ自宅へと帰るのだった。

＄GMコメント
　第３話はキャンペーンの転回点。神復活への情報を一通り出して、PCに立ち位置を考えてもらうことが目的でした（決断は次回以降でいい）。それと共に、三者三様の再会。個別にやると話数が足りないので、FH秘密基地にいると強引にひとまとめ。最後の脱出は「空中」か「海底」かで難易度が変わりますが、基本的にPCしか助からない想定でした。NPC全員を助けたのは、お見事としか言いようがない。その後に、ジャーム化の悲劇が待っていようとは。やはりダイスゲームの一面もまた、TRPGの面白さです。

【トレーラー】
遠藤あてみが失踪して数カ月。ついに人類抹殺計画が始まった。オーヴァードに直接殺される者、ジャーム化して暴走する一般人、それに襲われ命を落とす者・・・。UGNは守るべき人類に牙を剥かれ戦意喪失する。
抹殺機関NGUは短期間で勢力を増大した。もはや、奴らを止める者はいないのか。少年は正義の怒りをぶつけようと立ち上がる。けれども、データが知られている以上、天才的頭脳の前に勝ち目は無い。だがしかし、たとえ圧倒的な戦力差があろうと、男には戦うべき時がある。
残された勝利の鍵は「絆」。
『ダブルクロス The 3rd Edition』　第４話「憎しみが呼ぶ対決」
ダブルクロス、裏切り者との戦いは愛と憎しみの果てに。

第４話「憎しみが呼ぶ対決」