第５話「トライ・クロス・ファイト」

＄オープニングフェイズ
■日本の情勢
　神ガイボルトが復活してから数日が過ぎた。復活して日が浅いため、K市に滞在して力を蓄えている。日本人の約30％は神ガイボルトを支持した。約20％、主に富裕層は神ガイボルトに反感を持ち海外への移住を決めた。残り50％は消極的賛成で様子を見ている。地下に潜り、抵抗活動を始める者もいた。

■神と悪魔
　峰良太（PC1）は山住朱子と共に神ガイボルトに仕えていた。そんなある日、FHが神ガイボルトに攻撃を仕掛けて来た。「貴様が神なら、俺は悪魔（ディアボロス）と呼ばれた男だ」と、FHエージェント春日恭二の率いる精鋭戦闘部隊が一斉に攻撃を仕掛ける。破壊の爪、氷、炎、レーザー、雷撃、重力・・・。だが、神ガイボルトは全く傷を負わず、逆に雷撃でFH戦闘部隊を壊滅させた。峰良太（PC1）が加勢するまでもなく戦闘は終わった。これが神の力なのか。

■UGN日本支部、解散
　遠藤いすか（PC2）他、主なUGNエージェントたちが日本支部に招集された。そこで日本支部長の霧谷雄吾はUGN中枢評議会からの指示について話す。「UGN中枢評議会は神が復活した国からの撤退を決め、日本支部は解散。最後の任務は疎開する市民を守ること」だと。しかし、霧谷雄吾はUGNを辞め、個人として日本に残り抵抗活動するらしい。元K市支部長、城山洋は花屋をやると言う。峰良太（PC1）のことが気になる遠藤いすか（PC2）としては、UGNの方針に従わず城山洋と共にK市へ向かった。

■変わらぬ平歯重工
　神が復活しても平歯重工の仕事に変化はない。むしろ、山住鋼造の根回しにより財界は神ガイボルトを支持するという方向で意思決定されていた。蔵木秘愛子（PC3）は新たな任務として、業務を妨害するテロリスト“ゲシュペンスト”を排除することを命じられた。

■外国政府の見解
　遠野ユウ（PC4）がビルの屋上でたたずんでいると、内原ゴウが現れた。復活した神は、いわばレネゲイドビーイングに近しい存在であり、妖怪の本能的に神の側に付くとのことである。別れ際の手土産に、盗聴して得た情報を知らせる。日本の元首相、鷹見右京と米国バッシュ大統領との通話記録だ。「神による政権交代をクーデターとみなし、米国は認めない。そして、強硬手段を使う」と言っていた。

＄ミドルフェイズ
■レネゲイド維新宣言
　峰良太（PC1）らが見守る中、K市では式典とTV中継の準備が進められていた。喪服を着た山住貴子が演壇に立ち、演説を始めた。「日本人の皆さん、聞いてください。既にご存知の人もいるでしょうが、この世界にはレネゲイド・ウィルスというものが存在します。そのウィルスが発症すると、人はオーヴァードになります。皆さんは、先日の人類抹殺計画という悲しい事件を覚えているでしょう。あれも暴走したオーヴァードによる事件でした。私たちは多くの市民を失いました。しかし、悲しいことばかりではありません。 テロを阻止したのもオーヴァードです」

　ここで、峰良太（PC1）にスポットライトが当たり、注目を浴びた。
「ここにいる峰良太君は、少し前までは普通の高校生でした。それが、神ガイボルトの名のもとに、テロリストに天誅をくだしたのです。我々には可能性があります。考えてみてください、日本は八百万の神の国です。日本人はその神の末裔なのです。わたしたちの誰にも英雄になる可能性があります。悲しみを希望に変えて、今こそ立ち上がるときです。
　環境問題、労働問題、経済、少子化ほか、わたしたちの社会は多くの問題を抱えています。これまでの政府が何をしてくれたでしょうか。今、新たな力により変革を起こし、美しい豊かな国を取り戻そうではありませんか。私はここに、甦った神ガイボルトのもとに旧政権を打破し、レネゲイド維新を宣言します」
　市民は口々に「ガイボルト」「峰良太万歳！」と支持のコールをする。しかし、臨時ニュースが入る。「国籍不明のミサイルが日本に向けて発射されました。数分後、奈良県に着弾する可能性が高い」と。
　着弾の直前、神ガイボルトがミサイルを消滅させる。市民はさらに信仰心を深めるのであった。この様子を見ていた峰良太（PC1）は、何か不安に感じるのであった。

■UGNではなく、人間として
　何らかの隠語ではなく、本当に花屋「カリオストロ」を再開するつもりの城山洋と別れて、遠藤いすか（PC2）は峰良太（PC1）を人気のない場所へ呼び出した。峰良太（PC1）は「何が正しいのかわからない、このままでいいのか迷っている」と告げる。遠藤いすか（PC2）は、UGNが日本から撤退すると告げた後、「人間の未来は人間が決めなければならない」と自分の決意を話す。

■暗き亡霊
　蔵木秘愛子（PC3）はテロリストに襲われると予想される輸送トラックを護衛していた。奇怪な骸骨のごとき仮面を被ったゲシュペンストが襲撃してきた。爆弾の扱いを得意とする手口や、喋り方のクセに何か懐かしいものを感じたのだが、迷っているうちにゲシュペンストを取り逃がしてしまう。危険な組織と知りつつ、いつまでも平歯重工に従う蔵木秘愛子（PC3）に対して、ゲシュペンストは哀しげな眼差しを向けていた。平歯重工の同僚は、内心で蔵木秘愛子（PC3）を無能と思うのだった。
＃セッションで見せた仮面イメージは、スカルマン（アニメ版）より。

■港にて
　遠野ユウ（PC4）は港で、日本から疎開する友人、大原拓馬（初期ロイス）を見送っていた。“ミネルヴァ”坂月那岐も護衛としてアメリカへ行くらしい。ゼノスは神の側に付く者と反対派に意見が分かれているらしい。プランナーは、新参者レネゲイドビーイングを軽視する神の姿勢が気に入らないとのこと。
＃仮面ライダーBlackの終盤イメージ。前週セッション後の雑談で思い付いた。

■誰がために
　蔵木秘愛子（PC3）では頼りにならないと、平歯重工はゲシュペンスト退治の助っ人を要請した。山住貴子は“英雄”峰良太（PC1）を送り込んだ。またも襲撃される輸送トラック。峰良太（PC1）が迎撃に出てくると、ゲシュペンストはつかつかと歩み寄る。パーンと平手打ち。
「峰良太（PC1）、何のため、誰のために戦っている？」「他を省みず救命救急に生きた者、理想社会の実現を目指して戦った者、生命の進化の研究に没頭した者、自らの存在理由の計画を進めた者、間違った目的や方法だったとは言え、彼らは皆自分の信じることを貫いていた」「しかるに、君は何だ。何のため、誰のために戦っている？」
「人智を超えた能力、レネゲイド能力はいわば十字架だ」
「君自身のよりどころはあるのか？」

二度も殴って、ゲシュペンストは峰良太（PC1）の覚悟を問うた。返事に窮する峰良太（PC1）。蔵木秘愛子（PC3）は不審に思って、《黒の鉄槌》でゲシュペンストの仮面を破壊する。半壊した仮面の下の素顔は、蔵木誠造だった。あっけにとられる秘愛子（PC3）。
「正体がバレてはしばらく活動休止するしかないな、フハハハハ」とゲシュペンスト／蔵木誠造は去っていった。
　第３話でFH秘密基地「わだつみ城」から救出したハズの蔵木誠造がなぜ？と峰良太（PC1）が疑問を口にすると、蔵木秘愛子（PC3）は保身のため父親を会社に売ったことを白状するのだった。その後、脱走したらしい。

■神とぬらりひょん
　遠藤いすか（PC2）が行動方針に悩んでいると、遠野ユウ（PC4）が現れた。「人間の生き方は人間が決めるべき。神が正しいのか間違っているかわからない」と悩みを告白すると、ユウ（PC4）は「直接会いにいけばいい」とシンプルな解決策を言った。二人で、神ガイボルトに会いに行った。特に妨害もなく、屋敷の奥に通される。
　まだ発声器官が完全に復活していないのか、神ガイボルトはテレパシーで二人に語りかけてきた。休眠している頃から素質ある者、山住一族などに語りかけて、復活の日の準備をさせていたらしい。遠藤いすか（PC2）が問うと、神ガイボルトは人間とペットとの関係に例えた。自らを奉る人間は必要だとも言う。遠藤いすか（PC2）が「人間になり、対等になって欲しい」と願うと、「人間になるのは不可能だから代わりに人間をオーヴァードに進化させる」と答えた。慌てて拒否する遠藤いすか（PC2）。結局は、物別れに終わった。しかし神ガイボルトの考えがわかった。
　帰ると、ラジオから「くじけない歌」が聞こえてきて、少し勇気をもらうのだった。

■やまない雨
　蔵木秘愛子（PC3）は会社にゲシュペンストの件を報告した。倒すことも捕まえることもできないのかと、上司は溜め息をつく。暗に無能呼ばわりされ、憂鬱な気分になる蔵木秘愛子（PC3）。雨が降り出した公園で独り。風の中。
　すっと差し出される傘。遠藤いすか（PC2）が仲間を集めに来たのだ。「私たちは神ガイボルトを認めてはいけない」と決意を口にする。配偶者、仕事、安定した生活、いろいろなものに囚われ迷っていた蔵木秘愛子（PC3）がようやく心を決めた。手始めに夫の真砂敬次を拉致し、花屋「カリオストロ」に監禁した。

■タケシロボと山住朱子と
　ゲシュペンスト退治に失敗してK市に戻って来た峰良太（PC1）を出迎えたのは川尾健だった。かつて中学校時代の親友だった男。「力を持った峰良太は、これまで健たち一般人を見下していた」となじり、「お前に代わって、これからは自分が英雄になってやる」と、モルフェウスの《ヴィークルモーフィング》能力で身長5m程度のロボットを作り出し、峰良太（PC1）に攻撃してくる。かつての友だちを殴りたくないと迷っていると、遠野ユウ（PC4）が現れて川尾健を気絶させるのであった。
　ユウ（PC4）が「神を認めない」と意見を言うと、峰良太（PC1）も迷いをふっ切ったようだった。
　峰良太（PC1）の裏切りを恐れ、山住朱子が最後の説得を試みる。だが、一般人を軽視する姿勢をユウ（PC4）に論破され、説得を諦めた。峰良太（PC1）は「K市市民みんなを守りたい」と決意した。
　戦いの前に、兄の記憶を受け継ぐバイク型レネゲイド・ビーイング「ガイア・ストライダー」と話をするが、彼は手助けできないとのこと。元々、山住の手により英雄を援助するバイクとして造られたから「ガイア・ストライダー」もまた、神の側である。

＄クライマックスフェイズ
■人類を守る者
　神との戦いを決意した三人の人間と、彼らの友人であるレネゲイドビーイングは神ガイボルトの滞在する屋敷へ向かった。先日とは異なり、容易に奥へ通してもらえそうにない。立ちふさがるのは、三姉妹の次女、山住祐希子と、三女の山住朱子だ。
＃GMとしてはボス戦二連続もかまわない。だが、PCの侵蝕率がもたない。

　助けに現れたのは、元レネゲイドハンター、死してサイボーグとなり甦り、洗脳を打ち破って“人類を守る者”となった山希鉄雄。もう一人は、孤高のUGNエージェント“デュランダル”藤原崇。
「ここは俺たちに任せて先に行け！」
「神を倒せるのは神殺しの能力を持つ者とその仲間だけだ」

■クロス・ファイト
　PCたちはついに神ガイボルトと対峙した。「究極存在」である神に勝てるのだろうか。だが、その弱点はユウ（PC4）が調べておいた。神ガイボルトに従う雷獣を一蹴し、蔵木秘愛子（PC3）が《孤独の魔眼》で攻撃を引きつける。遠藤いすか（PC2）の《フレイムリング》が実体を狙い射ち、峰良太（PC1）の電光をまとった爪がアストラル体を斬り裂く。息を合わせた同時攻撃に、無敵のはずの神ガイボルトが傷ついていく。だが、蔵木秘愛子（PC3）が倒れ、遠野ユウ（PC4）も倒れ、支援もなくなる。それでも、二人は最後の力を振り絞り、支援なしの通常攻撃で神ガイボルトを倒した。

＃Eロイス「究極存在」の弱点はGMが任意に決定するというルールです。今回の条件は下記の1-4で、1,2は情報収集で入手可。3と4は隠し情報でした。
　１．神殺し（対抗種）がいること。
　２．アストラル体と実体への同時攻撃（同じ行動値）。
　３．同時攻撃の２人は相互ロイスでポジティブ感情であること。
　４．同時攻撃のうち低い目を採用する。
　条件４をプレイヤーに言い当てられた時は驚きました。３回目の二人のダメージが全く同値になったのも面白きこと。

　神ガイボルトが倒れたことにより、前の政権が復帰するだろう。レネゲイド・ウィルスの情報はもはや隠しようがないが。

＄エンディングフェイズ
■辞表、転職、記憶操作（PC3）
　平歯重工の上田祐司から蔵木秘愛子（PC3）に電話があった。神との戦いの直前に無礼な連絡をしたことにも寛大で、度重なる不祥事と無断欠勤でクビになるところを自主退職扱いにしたと言う。その後、遠藤いすか（PC2）の勧誘により蔵木秘愛子（PC3）はUGNへ転職した。手始めに、UGN得意の記憶操作技術で、拉致監禁していた真砂敬次の記憶から蔵木秘愛子（PC3）に関する部分を消去してもらった。いろいろ吹っ切ったようである。

■いつか花も咲くだろう（PC2）
　遠藤いすか（PC2）は事件の顛末を霧谷雄吾に報告した。神ガイボルトが倒れたことにより、UGN中枢評議会は再協議し、日本支部の再建を決めたらしい。霧谷雄吾も日本支部長に復帰である。辞令を預かって、遠藤いすか（PC2）はK市へと向かった。元・K市支部長の城山洋は普通の花屋をやるつもりだったようだが、優秀な人材をUGNはほっておかない。城山もまた、支部長に復帰した。いろいろ荒れたけれども、種を蒔いて花が咲けば、人の心も癒されるだろう。

■今日もどこかでぬらりひょん（PC4）
　遠野ユウ（PC4）は人の悩みを聞いたり、困った人を助けたり、以前と変わらない日常を送っていた。たまに、人の邪魔をする内原ゴウの存在を感じたりもする。レネゲイドビーイング／妖怪は人間なくして生きていけない。

■戦いおわって（PC1）
　K市市民とも和解し、峰良太（PC1）は再び故郷に住むことになった。兄貴を探すが、神ガイボルトを倒した後、会うことはなかった。第２話でK市を離れて疎開していた両親も帰って来た。一家三人の日常に戻ったのだ。
　それから約一年後、峰良太（PC1）は洛北大学の入学試験を受けた。結果は不合格。UGNに協力したり、いろいろ忙しかったから仕方ない。学生ヒーローの悩みは勉強時間が減ること、というのは古今東西の共通問題のようだ。これから浪人生活の始まりである。

■焼肉喰うと侵蝕率下がるって本当ですか
　受験に失敗して傷心の峰良太（PC1）を励ますため、久しぶりに仲間が集まった。UGNのK市支部や内原ゴウ、サイボーグの山希も揃って、にぎやかな焼肉パーティーになる。 「勉強を教えてあげる」と上から目線の遠藤いすか（PC2）。嫌みな態度はあてみに似てきたようである。
　盛り上がっていると、神の側の人間、探偵Bが遠野ユウ（PC4）宛の手紙を届けに来た。差出人はユウの兄、天宮ノウ。中身は挑戦状。

To be continued　
ぬらりひょんハリウッド編につづく。

＄GMコメント
　キャンペーン最後の敵は、やっぱり神格クラスだろうと、おおよそ決めていました。しかし前回ラストを受けて『真・女神転生』かよ、と悩んだシナリオでした。PCが神の側に付くも、反逆者となるも自由と考えて複数ルート（PC戦闘あり）を設定していました。
　プレイヤーが今まで決断を先送りしていたので、「誰がために」を問うシーンが必要と考え、蔵木誠造に再びスポットを当てました。第３話で死んでいたハズのNPCが大化けしたものです。プレイヤーの予想を裏切る方向に進んでいったら、どんどんカオティックグッドになってしまった。　最後の最後でUGNの信用も復権して一安心です。遠藤いすかが頑張ったよ。

【トレーラー】
久しぶりの休暇、ハリウッド・ラスベガス旅行を楽しんでいた。しかし、新たなレネゲイドビーイングが挑戦してきた。相手は完璧な超人頭脳の持ち主。最も危険な三種の遊戯に挑むことになる。レネゲイド・ゲーム、それは裏切りのゲーム。騙される方が悪いと人は言うのか。
『ダブルクロス The 3rd Edition』　「レネゲイド・ゲーム」
レネゲイドーそれは裏切りを意味する言葉。

「さあ、お前のロイスを数えろ」

第６話「レネゲイド・ゲーム」