第２話「霊峰・異聞」

＄オープニング
前回の事件から２年後、1940年、秋。

■父と子と
　未だに中東で放浪生活を続けていた御子柴は三通の手紙を受け取る。一通は家庭教師だった恩師から、一通は前回の騒動の中心だったアスラン王国王女ジュリアから、一通は日本の実家の父からである。父からの手紙は最後に置いておいて、恩師からの手紙を読むと古巣の軍に戻り、海軍兵学校で教えていると書かれている。最近は『竹取物語』の研究をしているとのこと。さらに父からの手紙は置いておいて、ジュリアからの手紙を開くと、このたび正式に戴冠するので戴冠式に招待するとの内容である。ついにあきらめて父からの手紙を開くと、日本も大変な状態だからお前も戻って国のために働け、と書かれている。今までのことは水に流すとも書かれているので、いい加減国に帰るべきかと思う御子柴だが、日程的に戴冠式出席後に帰国することになる。

■父を放置して美女と出会う
　ヨハンはドイツに併合されたオーストリアで師匠ハインリヒ・イザークと相変わらずの研究生活をしている。ヨハンは「我らがドイツ」などと結構親ドイツである。彼の元にもジュリアから戴冠式への招待状が届く。出席することにしたヨハンが駅で列車を待っていると、１人の男が近づいてくる。「ぶしつけなことを聞くが、君は家族がいるか？」　彼は前回も登場したグスタフ・シラーという男で、ジプシーからもらった謎の板（明らかに中国の羅盤）を頼りに「日蝕の日に生まれたが何者かにさらわれた我が子」を探しているという。羅盤は明らかにヨハンを指し示しているのだが、ヨハンは「私の父は師匠だけ」と取り合わない（前回、ヨハンは実父グスタフ・シラーへのロイスをタイタスにして昇華した）。

　連絡先だけ聞いて男を追い返した後、一体どういうことなのか考え込みながら歩いていたヨハンは、別の女性とぶつかってしまう。ぶつかった拍子に女性は持っていた写真を落としてしまうのだが、写真に写った４人家族の父親にヨハンは見覚えがある。前回戦って倒したドイツ人超人兵士“砲術の達人”ミハエルである。話を聞くに、彼女の名前はメイベル・ハイゼンベルク。義理の兄アドルフは行方不明となり、母は過労で病死。父ミハエルも戦死して天涯孤独になった彼女は、行方不明の兄を探しているのだという。兄について知らないかと尋ねる彼女だが、ヨハンはミハエルを自分たちが倒したということよりも彼女が美人かどうかが気になるという程度の関心しか示さない。

■指輪の謎
　フランスでレジスタンスに加わっていたフラウのところに、謎の中国人ジャーナリスト、フェブラリーが戴冠式への招待状を持って訪ねてくる。フラウがアスラン王国を訪ねると、ジュリアが近況として、国王不在のままではいろいろ難しくなってきたのでついに正式に戴冠することになったという話と、もう一つ「指輪」についての情報を教えてくれる。何でも、国の資料を当たったところ、ソロモンの指輪と同じくらい力のある指輪があと２つこの世に存在し、その一つは日本にあるとわかったらしい。「阿隠（あいん）の指輪」という名前しかわからないそうだ。

■新たなる任務
　MI6の上司に呼び出されたアリシア。ナチスの超人兵士リヒテル津田が日本で「遺産」を探しているという情報が入っている。日本へ向かう命令を受けた彼女は、オランダ人記者としての身分証を偽造してもらう。ジュリアからの招待状も届いているため、中東を経由して日本に行くことになった。

■富嶽三十六景
　前回見た火山のビジョンについて調べていたテクノイオンは、偶然見かけた浮世絵から問題の山が日本の富士山であることを知る。だが日本は戦争中ということもあり、入国は難しい。浮世絵をローズ商会のツケで購入したテクノイオンは、入国方法についての検討をローズ商会に任せ、招待状に従って戴冠式に出席するため中東に向かった。

＄ミドルフェイズ
■みんな怪しい!?
　戴冠式前の内輪のパーティーで顔を合わせたPCたちは、互いに近況や情報を交換する。ナチスが阿隠の指輪を狙っていると結論して、阻止しようと主張するPCたちだが、「謎の中国人ジャーナリスト」フェブラリーを信用するべきかということで若干もめる。結局、「この中に怪しくないやつなんてそもそも一人もいない」ということに決着する。彼女以外はPCであるという一点を除けば、某国のスパイがいたり、国から追われている娘がいたり、自称魔術師がいたり、非人間存在がいたりするわけで、フェブラリーも特に怪しいとは言えない。

　また、御子柴が良家の出身であることを知ったPCたちは、彼を説得して「日本国内で問題を起こさない」ことを条件にコネでビザを出してもらうこととなる。

■人形使いの挨拶
　戴冠式当日、アスラン王国の微妙な立場を象徴するように、招待客の中にはイギリス王家の使者から、フランスの大使、ドイツの使者も来ている（なお、フランスに至ってはナチス側、イギリス側、両政権から使者が来ている）。式の後、パーティーに出ていたPCたちは、ドイツ軍人ディートリッヒに話しかけられた。「なるほど、あなたが御子柴さんですか。…なにやら以前同僚が世話になったそうで」「アドルフ・ハイゼンベルクから、アリシアさんは優秀な情報部員だと聞いています。彼ですか？　今は改心してドイツのために働いていますよ」などと、PCたちの情報がすでにナチスに流れていることを伝えてくる。ディートリッヒはヨハンやフラウにも話しかけていたが、そもそもテクノイオンはパーティーに出ずに資料を閲覧していたため、「人数が合わない」などと言われてしまう。
＃なぜかPCが調査しなかった情報だが、前回の事件は全て“隠密の達人”によって報告されていた。

　戴冠式終了後、日本への出国に合わせてドイツ軍の動向を調べたPCたちは、ディートリッヒ他数名が日本に向かったことを知る。また、指輪が「尾根の指輪」とも呼ばれ、富士山や竹取物語と関係があること、指輪の所有者は隠密能力が極度に上がること、所有者は呪われ、数百年に一人は不死の化け物になるものもいるということなどがわかる。

　また、アドルフ・ハイゼンベルクは前回行方不明になった後、ドイツで「再調整」を受けて、鉄の仮面をつけた超人兵士“サンダーレオン”として働いていることがわかった。

■竹取物語・異聞
　長崎から日本に入ったPCたちは、京都にある御子柴の実家に行く前に、広島で『竹取物語』を研究しているという彼の恩師のところに行くことにする。そこで話を聞いたところ、富士山近くの「伏見村」で指輪の伝説を聞いたことがあるという。彼が研究している異説では、竹取物語は月の民と地上人の戦いの記録であり、地上人はかぐや姫から「不死の力」を持つ宝物を奪って火山の火口に投げ入れ破壊しようとしたのだが、破壊しきれずに残ったその宝物を伏見村に隠しているという。説の真偽はともかく、指輪についての伝承を知っている村の神主を紹介してもらった。

　京都に入って、父と話をする御子柴だが、日本の国際戦略について意見は合わない。とりあえず政界に入って自分の意見を実現すればよいだろうということになり、ついでに見合い写真を渡された。なおその夜、御子柴家には芸者が呼ばれた。

■富士山を信仰する村へ
　自動車を調達したのはいいが、実はPCたちの中に運転技能を持つ者がいなかった。かくして、謎の中国人フェブラリーが運転することになり、初めて役に立った。自動車で未舗装の道を行き、伏見村に到着したPCたちは、村長宅と思われる大きな屋敷の前にドイツ製の四輪駆動車２台が止まっていることに気づく。PCたちはなるべく目立たないように神主宅に向かった。神主の口から、ドイツ人達は数日前から村に来ており、村長の協力を得て指輪を探していることを教えられる。指輪の隠し場所は神主の秘伝で、彼らはまだ隠し場所は知らないというが、事態はそれ以上に厄介なことになっていた。猟師のゴロウ・クリタが指輪を隠してあった祠を偶然に見つけ、指輪を持ち出してしまったらしい。「指輪の持ち主は普通では見つけられないほど隠密能力が上がる」という効果があるため、見つけるのは至難の業であるという。

　神主から祠の場所を聞き、そこを起点に山狩りを始めようとしたPCたちだが、神主宅を出た途端、ディートリッヒと遭遇してしまう。各個撃破を考えるが、“人形使い”ディートリッヒに操られた村人に邪魔され、機会を逃す。

■プレシャスの力
　ドイツ勢に捕捉される前に指輪を見つけようと祠に急いだPCたちは、祠近くで「目に見えない何か」を発見する。姿を現した猟師、ゴロウ・クリタに話しかけるが、明らかに正気ではない。とりあえず倒して指輪を取り上げようとするPCたちだが、その攻撃は全く効かない。実はそれも指輪の呪いの一部であり、「特定の手段でなければ一切ダメージを与えられない」ということがわかる。また、正気を失うのも呪いの一部であり、正気を失えば失うほど指輪から与えられる力が強くなることも分かる。

＄クライマックス
■哀しき勝利
　騒ぎを聞きつけて現れたドイツ勢も加え、三つ巴で戦うことになる。洗脳されていると思われるアドルフを助けたいアリシアの意向や、人形遣いの混乱攻撃、６体に分身する“光速の達人”ブリッツなどに苦戦しつつも、ブリッツが指輪を奪うことに失敗したこともあり、PCたちは手堅く勝利する。

　指輪所持者を倒すには弱点である火炎攻撃しかない。「悪いが、手加減できないんだ」と言って、御子柴がゴロウ・クリタを打ち倒し指輪を奪い取ると、ゴロウ・クリタは炎をあげて燃え上がり消し炭になってしまった。この指輪は破壊するしかないと再度確認するPCたちだった。なお、アドルフの洗脳は惜しくも解けることがなく、そのまま正気を失った化け物になることが分かったので、アリシアが自らの手でとどめを刺した。

＄エンディング
■三つめの指輪は
　テクノイオンは指輪を預かり、ギリシャでヘパイストスに縁のある火山を探して火口に投げ込んだ。そのとき、「チョビ髭の小男が最後の指輪を持っている」というビジョンを得る。

　オーストリアに帰ったヨハンは、今回の顛末を師匠に報告する。それを聞いた師匠は、最後の指輪「ニーベルングの指輪」を持っているのはヒトラーであると言う。さすがに手を出せないが、占いによればあと４年ほど待てば機会があるはずなのでそれを待とうと言う。「時に、私の父を名乗るものが現れたのですが」「まぁ、気にするな」「そうですね。風采のあがらない小男でしたし」

■家出少女の憂鬱
　フラウはジュリア王女にことの顛末を報告に行く。これからどうするかの予定もないフラウに、ジュリアはそろそろ両親に連絡するべきではないのかと忠告する。だが、フラウは躊躇するのであった。
＃GM的には、家族の悲劇フラグでした。一度くらい実家に連絡していれば、兄は助かったかもしれない。

　アリシアは持ち帰った遺品を手にメイベル・ハイゼンベルクに兄アドルフの死を報告した。兄さんの分も幸せになるようにと言い、第三国への出国を提案した。後で聞いたところ、彼女はスイスへ移り、ジャーナリストになったという。

　日本に残った御子柴文彦は、国際経験を生かして当面は外務省で働くことになった。なお、見合いも素直にするようだ。そして、愛は流れる、時は流れる。

【トレーラー】
1945年5月、ドイツ第三帝国は敗北した。だが、彼の闘争はまだ終わっていなかった。「まだだ、まだ終わらんよ」
異変を察知した連合国はニーベルングの指輪を求めて秘密工作員を派遣した。 決戦の地はドイツ領ノイシュヴァーベンラント。　「ジーク・ハイル！」
氷原に兄妹の悲しい叫びがこだまする。　「あの優しかった兄さんに戻って」
『ダブルクロス The 3rd Edition』「Relic Quest W」第３話「総統・闘争」
ダブルクロスーそれは裏切りを意味する言葉。君は生き延びることができるか。

【第３話「総統・闘争」】