第6話「虹の彼方に」

＄オープニング
■テクノイオンの計画
　二千数百年の長きに渡るテクノイオンの計画が成就しようとしていた。第５話で捕えたアドルフ・イザーク（有栖川の父親）の肉体を器とし、魔法のサークレットとそこに集めたイデアを鍵に、アレクサンドロス大王を降臨させたのだ。「長かった。ついにプロジェクト・イスカンダルが始動する。アリストテレスよ、ついに大王との再会を果たしたぞ。大王様、では世界征服を開始いたしましょう」

■たった一つの冴えない方法
　UGN日本支部が発足して5年が経過した。東京地下鉄ジャーム事件と富士山麓に拠点を持つFHセル「プシッタクス」との全面対決など、数々の事件を解決して来た。
＃単なるネタでなく。オウム真理教の事件を風化させないために一言触れてみた。

　ラウは戦いの中でFHの藤堂勇と再会し、訣別した。すっかりUGNエージェントが板に付いたようである。

　エヴァは一つのFHセルを壊滅させたとき、テクノイオンの計画書を発見した。それによると、大王の降臨と異世界征服により完全なる世界を探し求めているらしい。

　有栖川は、アドルフが居なくなって心配する母親に、自分が探し出すと語るのだった。

　ウィリアムは、祖母のアリシアがテクノイオンの脅威と不安を告げる電話に対して、自分が阻止すると決意していた。

　1998年のある日、UGN日本支部の要人として多忙にしている御子柴のもとにコードウェル博士から極秘実験「プロジェクト・メビウス」への協力要請があった。「プロジェクト・イスカンダル」を阻止できる唯一の方法とのこと。少人数の信頼できる者だけで来るように言われた。

＄ミドルフェイズ
■メビウスのそらを超えて
　御子柴たちはコードウェル博士の要請に応じて、ニュージーランド奥地の研究所にやって来た。「雨と太陽があわさるとき、虹の架け橋ができる」という古い言い伝えや北欧神話の伝承を語り、村雨の剣と太陽の石の潜在能力を引き出せば次元移動できるという仮説を話す。だが、初めての実験ゆえにリスクも未知数である。そんなコードウェル博士を有栖川はやたらと警戒していた。

　少し遅れて“タイムスクープハンター”古橋七海もやって来た。博士は、古橋を怪しむ様子もなく記録する者が必要だと同席を承認した。やがて実験が始まった。村雨の剣と太陽の石を電子回路で結線して電圧をかけて行く。中空にプラズマが走り虹色の輝きが溢れ出し、やがて異世界へのメビウス・ゲートが開いた。だが制御しきれず、PCたちはゲートに吸い込まれて異世界へ飛ばされ、気を失うのであった。なお、研究所は次元移動の影響でひどく破壊された。研究所跡を訪れたUGNの調査では死体も見つからず、全員死亡と判断された。

■マスクドヒーローズの世界
　ラウが目覚めると、そこは故郷のベルリンに似た都市、1999年だった。赤と青の全身タイツを着た“スパイディ”と名乗る男に助けられていた。漫画のキャラのように説明口調で話す“スパイディ”によると、悪のオーヴァードを追っていると言う。悪漢との戦闘になると、なぜか《ワーディング》が発動できない。異世界に来た事実を、ラウは改めて認識した。

　ギリシアに恐怖の大王アレクサンドロスが降臨し、世界を征服しようとしているらしいと聞いて、ギリシアに向かうことにした。大王の軍勢は姿こそ古代マケドニア兵だが、戦車など近代兵器を破壊して進軍するさまに恐れる。ラウの存在に気付いたテクノイオンがアレクサンドロス大王と共に現れ、大王の能力《封印の楔》により力を封印した。こうしてラウは捕虜となった。

■シノビガミの世界
　エヴァは簡素な会議室のような場所で気が付いた。壁のカレンダーを見ると、2000年の日本と推測できた。（第４話で聞いた）比良坂機関という組織の男が尋問に現れ、「忍術」を使って、エヴァの秘密を簡単に見抜いた。エヴァが敵でも味方でもないことが判明したので、異世界へ通じる門からの大王の襲来に備えていると情報交換した。この世界では来訪者はあまり珍しくないようだ。エヴァは比良坂機関および他の忍者組織と襲来予想地点に向かう。しかし、忍者たちは自動命中4点ダメージの技などを繰り出すのだが、大王の圧倒的な力に敗北する。HPの桁が違う・・・。エヴァは大王の能力《封印の楔》により力を封印され、捕虜になった。テクノイオンは「また違ったか。だが、この者を餌に御子柴と有栖川をおびき寄せられるだろう」と言い残す。２人は大王の末裔ゆえに、大王の能力を完全に近づけるため、狙われていた。

■化成学園の世界
　有栖川紫織は学校の保健室のような部屋で意識を取り戻した。第５話の生徒会役員とよく似た赤城光という少女に助けられていた。聞くと、化成20年の化成学園に着いたらしい。有栖川の母校の３倍の敷地面積を有する巨大学園だ。この世界では大王の襲来に備えてレジスタンス活動が始まっているとの情報を得て、DC団というレジスタンスに接触した。DC団のリーダーは竜崎恭一郎といい、能力者が魔女狩りに遭う世界の生き残り。そして、第５話の生徒会会長の兄だった。有栖川紫織はDC団に協力することにした。なお、団名の由来を尋ねると、大王に反逆する意味で、ダブルクロスーそれは裏切りを意味する言葉、とのこと。

　魔術師ハインリヒ・イザークのイデア体の助言により、敵の本拠地は次元の狭間にある次元城と判明した。ハインリヒは「我が弟子ヨハンの弟子なら、弟子も同然。それに、不肖の弟子の悪意から守っていた」と明かす。突然に姿を現したハインリヒを有栖川は大師匠と呼んだ。

■パラノイアの世界
　御子柴、ウィリアム、古橋七海の３人は整然とした都市に着いた。「アルファ・コンプレックス」と呼ばれるこの町では、全ての市民は幸福であったが、目が笑っていなかった。赤い服を着た“トラブルシューター”を名乗る一団が現れ、「ミュータント反応有り」と言うと警告もなしに２人が銃で撃たれた。一撃で死なないのを見ると、“トラブルシューター”は方針変更した。「テクノイオンから捕縛命令が出ている」とか言うのを聞いたので、２人は様子見で捕まることにした。能力封印の手錠を架けられ、紫や白色のドアを抜け、自動通路に乗って、ギリシア彫刻風の均整のとれた男と出会った。彼はテクノイオンのコピー。実験的に完全なる世界を作ったらしい。話をしていると、警告音が鳴り異変を知らせる、DC団の襲撃だ。“トラブルシューター”たちが迎撃するが、なぜか足並みがそろわない。コンピューター室までやって来たコードウェル博士や矢野俊策たちDC団と協力し、御子柴とウィリアムはテクノイオンもどきを倒した。

■デモンパラサイトの世界
　ウィリアムが話を聞くと、コードウェル博士は異世界に飛ばされた後、DC団と協力して様々な世界で戦ったり、怪しげなアイテムを手に入れたり、矢野俊策と名乗る人物（カヴァー：学生／ワークス：ゲームデザイナー）と出会ったりしてきたらしい。博士は次元移動の指輪（使い捨て）を取り出すと、治療に最適な世界があると言って、御子柴たちを連れて行った。異世界へ着くと、まず焼肉屋へ向かった。焼肉をたらふく食うと、なんと２人の侵蝕率が２点下がり、HPも全快した。さらに、この世界ではレネゲイドウィルスの治療方法が確立していると言う。興味を覚えるのだが、仲間との合流が先決だと、次元城へ向かった。

■次元城の大王
　暗い空間に光が明滅し滝が下から上へと流れる異空間、次元の狭間。そこに城が浮かんでいた。ラウとエヴァは次元城の端にある隣り合わせの牢屋に捕われていた。テクノイオンが尋問に現れるが、アレクサンドロス大王が統治する完全なる世界という目的を確認しただけだった。旧知のよしみで仲間にならないかという勧誘を、ラウは断った。

　次元城を御子柴、有栖川、ウィリアムとDC団が攻めて来た。村雨の剣と太陽の石の共鳴能力により、牢屋を見つけて2人を助け出した。2人が能力を封じられていることを話すと、コードウェル博士は謎のカードを取り出して封印解除させるのだった。そして、大王が待つ玉座の間へ向かった。多数のユニバーサル・マケドニア軍をコードウェル博士とDC団が引き受け、御子柴たちはアレクサンドロス大王、テクノイオン、近衛兵を相手に戦闘を開始した。

＄クライマックス
■決戦！
　10人の近衛兵を30秒たたずに一掃したまでは良かったが、アレクサンドロス大王の猛攻に何度も危機に陥る。テクノイオンを倒した頃から流れが変わり、満身創痍ながらアレクサンドロス大王を倒すことに成功した。大王が気絶するとサークレットが外れ、これを破壊した。アドルフ・イザークは運良く後遺症もなく、助かった。テクノイオンが倒されたとき、ソロモンの指輪とニーベルングの指輪は多数の魔力の小さい指輪に分たれ、異空間へと飛んで行った。PCたちの手元には次元移動の指輪（使い捨て）が各１人分ずつ残された。
＃指輪の飛散先は新仮面ライダーネタなので気にしないでください。

＄エンディング
■反逆の聖人
　DC団の矢野俊策は何か着想を得たような顔で自分の世界へ帰って行った。

　PCたちが次元移動の指輪を使って元の世界に戻ると、南極点近くのゲートに出現した。とりあえず、近くに見つけた旧ナチスドイツ基地跡に避難して防寒具など使える物を探す。御子柴がUGN日本支部に連絡を取ると、出発時点から11年経過したこと、実験関係者は死体不明のまま死亡扱いになっていることが判明した。頼るべく轟木（日本支部長）も既に亡くなり、事情を話したUGNエージェントはノイマン能力で状況を理解したものの、官僚的な対応しかしない。空白の10年間にUGNは変わってしまったのだ。

　ウィリアムは高校の友人で、共にUGNに就職した霧谷雄吾を呼び出してもらう。今やUGN日本支部長に出世した霧谷雄吾は、UGN内の派閥やFHなど他の組織の動向を気にしながらも、UGN南極支部へ働きかけて回収チームを送ることにした。彼らの通信を聞いていたコードウェアル博士は、元々は地域密着で人々を守るために集まった組織が、内部の権力争いや大国の利権に左右され大組織化の弊害を被っていることを察して絶望した。UGNは悪い方へ変わってしまったのだ。コードウェル博士は懐から謎のアイテムを取り出してPCたちの記憶を消去し、同行して帰還した事実を隠蔽した。「一致団結するには、アレクサンドロス大王のような強大な敵が必要だ」と言い残して。

■ガーディアンの志を継ぐ者
　ラウは、自分が造られたという旧ナチスドイツ基地でフラウ・オクセンフェルトの「一緒に故郷へ帰る」というメッセージを見つけていた。自分探しの旅は完結したようだ。

　エヴァはCIAに戻って報告しようとするが、死亡した者に居場所は無かった。

　ウィリアムは一度イギリスに帰り、亡き祖母アリシアと自分の墓参りをした。妖精郷伝説の残る土地柄ゆえに家族は異世界帰りを信じてくれたが、世間体があるからと帰還を拒まれた。

　有栖川は父親アドルフ・イザークと共に帰って来た。母親は暖かく迎えてくれた。

　御子柴はUGN日本支部へ戻って、現支部長の霧谷雄吾と今後の身の振り方を相談していた。11年前に死亡したことになってるので、そのままの社会復帰は無理だが、新たな身元を準備できると霧谷雄吾は言う。御子柴は５人を集めて、UGN日本支部に新たな特殊部隊を結成した。創設時の理念を忘れないため、「護人会」という名前を受け継いで。

■そして、世界観は第三版へ
　ある冬の夜、世界中で電波ジャックがあった。コードウェル博士がレネゲイドウィルスの存在を全世界に公開し、人を守るという理念を忘れたUGNを破壊すると宣言した（ルールブック1のp290参照）。1930年代から始まったダブルクロス3rdキャンペーンは、最後に第三版の世界観に変貌した。
　コードウェル博士の変節を記録し終えた古橋七海はR.C.（レネゲイドセンチュリー）へと帰還した。余談であるが、彼女はウィリアムの子孫だったらしい。禁則事項ゆえに語れなかったが。

『ダブルクロス The 3rd Edition』キャンペーン　「Relic Quest W」完結