第３話「DREAMS」

“リッター・ドラッヘ”の性能を目の当たりにしたレジスタンスたちは、１ヵ月後の総決起を約定して地元に戻った。富士樹海奥のアジトに残されたのはGAEAのメンバーと、戦死者2人の遺体。

香坂真奈は、百人一首の「花のいろはうつりにけりな　いたずらに　我が身よにふる　ながめせしまに」に続いて、世阿弥の能『泰山府君』で冥官が通力でわずか７日の花の命を２１日に延ばすという内容をアレンジした歌詞の曲を歌っていた。

★　☆　冥界　★　☆

気がつくと、一宮と小島は暗い暗い世界に飛ばされていた。進んでいくと「此処に入る者一切の希望を捨てよ。」と書かれた門の前に来る。小島はその門に書かれた言葉がダンテの『神曲』と同じだと分かるが、ここが本当の冥界だと信じようとしない。

★　☆　現世　★　☆

一方現世では、立花（今回はＮＰＣ）が魔導書『北斗経』に書かれている陰陽道の秘術「泰山府君祭」で、二人を現世に呼び戻すため儀式を準備していた。GAEAの協力者菊地舞子があの世を案内してくれると言う。
＃菊地舞子とは、ハイエナ作戦によって助けられた少女。（０話参照）

立花深雪が儀式の中心となって執り行い、鳴宮真言が現世から願いを込めて呼び続ける役割、サクヤが儀式の場を結界で守る役割、菊地舞子が冥界の水先案内人となった。２人を戻すのに1人だけでは力不足ということで、菊地と同じ境遇（覚醒プログラム生還者）の鳴宮行が協力を申し出る。

★　☆　冥界　★　☆

一宮と小島は三途の川を越え、閻魔大王の前に引き出される。一宮純は役人の一人が知人の探偵“ヤマサン”こと山田三郎だと気付く。彼は閻魔大王の甥の一人で現世と地獄を行ったり来たりしているらしい。
＃この他に、閻魔大王には息子１人、甥と姪が１人ずついることが確認されている（笑）

帰して欲しいと懇願する二人に、ヤマサンは「地獄の沙汰も金次第。」と言い放った。「地獄腐りすぎ〜」と思いながらも、一宮は現金の代わりに精髄（生体マナともいうべき能力値）を2点支払って、台帳を書き換えてもらおうとする。ヤマサンが人別帳を確認すると、一宮の名は入ってないらしい。事務処理に時間がかかるので、とりあえず冥界観光でもして時間をつぶすことにする。一宮はかつての恋人、鮎川俊夫に会いたいと思って探すことにした。まず修羅界にやって来た２人はブラッドエンジェルズのメンバーの鰯谷と鮒井と再会。彼らは死者らしく、現世に戻ることを懇願する。どうすることもできず追い払う。

＃座間製作所を襲撃した一宮純の仲間のうち、鮫島も戦死したと思われていますが、ここでは登場しません。これは伏線でした。

★　☆　現世より冥界へ　★　☆

一方、鳴宮行と菊池舞子は立花の儀式により生きたまま冥界へと向かおうとする。出発前に近畿地方レジスタンスの“キビツヒコ”桜井桔平が鳴宮行に桃を渡す。いざというときに使え、と。現世を離れ精霊界へ移動したところで魔導書『北斗経』の精霊・玄武が2人を迎える。玄武に乗って冥界へ向かった。なお、鳴宮行は装備として直剣を携えていた。騎龍の変じた魔剣である。

玄武：ゲンとかガメラという愛称で呼ばないでください。

途中で、普通の大学生として平穏な暮らしをしている鳴宮行と中学時代のクラスメートの姿など、別の世界と思われるものを垣間見る。
＃パラレルワールド的展開への伏線？

★　☆　冥界　★　☆

天界に向かった一宮と小島は、そこで鏡をねらう詐欺師に賭を挑まれる。だが、うさんくさげに思った小島が条件変更を要求すると馬脚を現して逃げていった。安堵したのも束の間、今度はＳと名乗る男（魔術師？）に出会う。情報を聞こうとすると、リドルを出される。二人が答えに窮しているところに、鳴宮行がやってきて「答は、蛇だ」と正解を言い当てる。リドルに悩んでいる間に、一宮は小島の鏡に八頭蛇の姿が映ったのを見たが、気のせいにしておく。Ｓは、現世の物を持ち込めないはずの冥界になぜ鏡が持ち込めるのかという疑問を指摘する。さらにＳは、小島の鏡とＳの宝物を賭けてリドルを掛けようとした。しかし怖じ気づいた小島は辞退する。

ヤマサンのところに戻って、鮎川俊夫はどこにいるのか尋ねると、台帳には載ってないと答えられる。これにより、俊夫は生きているという仮説を立てた。「まさか、俊夫は生きている!?」

地獄から脱出するとき、ＰＣ達の脱出に気付いた鰯谷と鮒井、そして行の元クラスメートたち（覚醒プログラムの犠牲者）が追いすがる。鳴宮行が持っていた桃を投げつけて何とかこれを撃退。さらに追いすがる亡者を、鳴宮行は魔剣チュルヴィングを一閃して撃滅する。

小島：閻魔さ〜ん、情報統制してくださいよ〜

＃暗い闇の世界で生命の輝きを持つ者がいたら目立つでしょう。情報統制に関係なく、生者は見つかってしまって仕方ない、という設定。ましてや友人や同志という縁があるし。

★　☆　現世　★　☆

冥界への旅を無事に終えたことで、鳴宮、小島、一宮の3人は霊力が強くなった。
＃「霊格」＋１レベル、「領域：精霊」１レベル習得。『メイジ』のシステムで最も成長困難な能力ゆえにイベント的に上昇させました。

何とか戻ってこれたものの、一宮の様子がおかしい。上半身は別段おかしいところはないが、下半身は蛇になっていた！！
＃う、うっ、みんなの視線が痛い…（by 一宮）

そうこうしていると、鮎川健司がアジトにやって来た。“リッター・ドラッヘ”強奪時の裏切りは、俊夫の情報を知るために政府に接近しようとしてやったと言い、さらに「俺は知ってしまった・・・。純、きみが何者であろうと俺は君を愛す。赦してくれとは言わない。でも、出来る限りの償いはさせてくれ。」と一宮純に告げる。

医者の結城も戻って来た。京都の田中研究所まで出張して鏡に記録されていた情報分析とDNA分析をやっていたのだ。結城は分析結果を告げる「鳴宮行と鏡にあった古代の記録との適合率は60％で、父は40％、母は15％、姉は80％である。」と。さらに結城は、鏡に封じられた八岐大蛇の制御装置アメノムラクモを入手してきていた。適合率が一番高い鳴宮真言（行の姉）がアメノムラクモを使うことになる。
＃田中研究所という名称はレポートが初出です。北欧は別の神が支配しているので、2001年以降にノーベル賞は存在してないかもしれませんが。

現世の結界を解除して死者蘇生儀式の異世界用結界に注力していたため、富士樹海奥のアジトの位置は敵に感知されてしまった。鮎川健司と会話しているうちに、佐々木隊長と神撰組三番隊5人（隊士1人は前回の戦闘で負傷退場）が襲撃してきて戦闘になる。化け物になってようやく戦力になると思われた一宮だったが、またしても佐々木にめった斬りにされ、やっぱり生死の境をさまようことに。なんとか、一宮は佐々木にとどめをさす。そのとき佐々木はぼろぼろと崩れ落ちる。

戦闘中に鳴宮行の頭の中に「鳴宮君、これ以上戦わないで」と精神感応で話しかける声が聞こえる。声の主は椎名光子（１話参照）だった。騎龍Nr.15 ノートゥングに騎乗し、不可視能力を発動させて接近して来ていた。外部音声に切り替えて「鳴宮君は大人たちに利用されているだけ。その機体の秘密を知っているの？それは乗り手に死をもたらす機体。汚い大人たちを排除した、私たちの国を造りましょう。」と語り、行が使っている騎龍チュルヴィングは死をもたらすものなので、使うのを止めるよう警告する。
それを聞いて風見「それでドイツは手放したのか。納得、納得」
＃　……あんた、天然すぎ。（呆）（by N）

小島が鏡から二首大蛇を出現させて、鳴宮真言が操りノートゥングに攻撃する。椎名光子は不利を悟って撤退した。

戦闘が終わって、鮎川健司が一宮純の正体と鮎川俊夫の前歴を説明する。鮎川俊夫は、政府系の研究所でクローンを造っていた。神撰組に殺される１年前にそこを辞め、レジスタンスになった。そして死んだのは政府の目を誤魔化す芝居で、今も生きているらしい。一宮純の本来の姿は生物と丹紗との融合した龍蛇、神人。古代のDNAと人間の受精卵をもとにして遺伝子操作で生み出された。１年で急速成長し次の１年は人間世界に混じって生活していた。ゆえに５年前以前の記憶は不明瞭である。マトリクス変換により、上半身人間、下半身蛇体の赤い奇麗な姿に変身する。人間形態になるときに意志力を１点消費する。追加能力は赤外線感知、牙、尻尾、毒液吐瀉、防御の鱗、人外の美。２本の腕で人間用武器を使用可能。

小島は裏切りの前科がある鮎川健司を殺すべきだと主張。健司も死のうとすると、一宮が健司を３発殴り「生きて罪を償え」と言って許す。小島の怖い一面を見てしまった鳴宮真言は、少し距離を置くことにする。こうして、１ヵ月後の総決起に備えるのであった。

【参考情報】

クラオカミ神
イザナギ神がヒノカグツチ神の首を斬った血から生まれた神で、谷の水を司る。「オカミ」というのは龍を意味する古語であり、水中に住む龍蛇神とされる。貴船神社、丹生川上神社に祀られている。謎の魔術師“レッドサーペント”や一宮純のDNA情報はこの神の眷属と推測される。

丹紗（丹沙、丹砂）
硫黄と水銀の化合した朱色の鉱物。水銀の原料、顔料。薬剤を製するのに使用される。 水銀は常温で液体であるゆえ、神秘的な存在とされた。