第5話「LAST IMPRESSION」

ＰＣ紹介（第5話時点）
鳴宮行：騎龍チュルヴィングを操った英雄。海底に沈んで行方不明。
一宮純：鮎川俊夫と協力して医療関係の研究に従事。浪士たちを養う。
立花深雪：新政府の評議会に参加。体験をもとに小説を執筆。
小島浩成：新しい賢者の学院の助教授。政治にも参加。

◆　◇　◆　◇

あれから幾日が過ぎたのだろうか。鳴宮行は中学時代の友人たちと共に大学に通い、平穏な生活をおくっていた。友人の一人が『リッター・ドラッヘ戦記』という小説を紹介する。主人公の行（こう）が鳴宮に似ていると言う。何か奇妙な感じのする鳴宮だった。そんなある日、天空から龍の爪が出現して鳴宮を襲う。逃げる鳴宮、追う龍。他の人には見えてないようだが、無関係の者を巻き込まないよう鳴宮は人気のない場所まで逃げる。しかし反撃するための武器もなく、ついに龍の爪が命中した。と思ったその時、突然現れた椎名光子が鳴宮を突き飛ばして身代わりになった。椎名光子は龍の攻撃を受けて息絶えた。
「私はたくさん殺しすぎた。代わりに龍の犠牲になるわ。鳴宮君を殺したのも一度なら、命を助けたのも一度。これでいいよね。」

そして、鳴宮は深い眠りへと落ちていく。

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「なるほど、ここでこの娘を殺すか。かえって、人気が出るかもしれないな。あと、もう少し枚数があるから頑張って書いてくれ。」 立花の原稿を見ながら編集者がつぶやく。これは立花の夢なのか？

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武装蜂起して、オモイカネを倒してから一週間が過ぎた。核ミサイルを宇宙に捨てて、流星となって東京湾に落ちた鳴宮たち騎龍（リッター・ドラッヘ）の位置探索が完了し、サルベージ作業が進められていた。
小島：魚を食って生きているかも。いや、生命維持機能とかあるかもしれんし。

立花と一宮純は10代後半の見慣れぬ美少女が様子を伺っていることに気付く。関係者以外立ち入り禁止と注意すると、美少女は関係者だと主張する。話を聞くと、どうやら天堂明の妹で鳴宮の知人でもあるらしい。一週間も過ぎているで、最悪の事態を考えておくよう説明しておく。 やがて、海中から謎金属製の繭状物体が３体引き上げられた。生きていて欲しいという願いが届いたかのように、２体のハッチが開く。それぞれの繭状の中で鳴宮行と天堂明が深く眠っていた。２人の生存を確認し、病院へ移送した。残る１体を強引にこじ開けると、中には、生命エネルギーを全て失ったかのようにミイラ化した椎名光子の遺体があった。
１日後、鳴宮行と天堂明は意識を取り戻す。椎名の訃報を聞いて、鳴宮は「やっぱり」と呟く。
＃夢で知ったということか。物理的には一番損傷の激しかったノートゥングが宇宙活動と大気圏突入に耐えられなかったとも考えられるが。

天堂明は自分を見つめ直すために放浪の旅へと出た。危険人物として、政府は監視を付けた。一方、３体の繭状となったリッター・ドラッヘは風見良一が研究所に引き取った。かつて座間製作所にいた“アシオモ”本多宗一を助手として研究を続ける。鳴宮行は大学に入学し、平穏な生活を得た。

◆　◇　それから一年が過ぎた　◆　◇

立花深雪が体験を基に書いた『ブラッドエンジェル　神への叛乱』（角川書店）がベストセラーになっていた。 一宮純は恋人の鮎川俊夫と共に教会へ急いでいた。立花深雪評議員は大統領の吉田左京と政府公邸から教会へ向かった。鳴宮行は両親とともに姉の姿を見守っていた。オルガンの音が静かに流れ、小島浩成と鳴宮真言の結婚式が行われた。
次の幸せを得るのは誰か？　花嫁の投げたブーケは一宮純が受け取った。

続いて、インペリアルホテルの35階、展望レストランに移動して披露宴が始まった。天気が良く、東京都内だけでなく富士山まで一望できる。一宮純らは富士山を見て、その麓での戦いを思い出していた（第２話、第３話）。吉田左京大統領をはじめとする歴々のスピーチも終わり、二人の馴れ初めを描いたビデオ上映が始まった。小島の幼少期から始まって、城南大学の研究室での出会い。その後に続いた映像は、座間製作所襲撃テロでの警備員殺害を命令するシーン、富士で神撰組を撃ち殺すシーン、明らかに予定と違う。「止めろ、ビデオを止めろ」と小島が叫ぶが、様子がおかしい。

皆がビデオに気を取られていたとき、窓の外に飛来する戦闘ヘリがあった。人外の知覚力で一瞬早く気付いた一宮純が「伏せて」と警告の声を発する。次の瞬間、ヘリからの銃撃で一面の窓ガラスが割られた。続いて、ガスマスクを着用したテロリストたちが乗り込んでくる。階下でも、護衛とテロリストとの銃撃戦が始まっていた。「イシン（遺臣、維新）の会」と名のるテロリストの目的は、復讐。「小島、鳴宮、一宮、風見の首のみを要求する。」

テロリストたちは麻酔ガス（ロシア製？）を使用し、披露宴の客たちは次々に倒れていく。小島は朦朧とする意識の中で真言をかばう。鳴宮行は昏倒した。結城が緊急処置をして、かろうじて一命をとりとめる。
＃ＧＭが「大失敗すると死にます」と言った抵抗判定で大失敗。ここで死なれるとストーリー上で困るので「後遺症により予約された死」ということで、この場は蘇生させる。『MAGE』が“ストーリーテリング・システム”ゆえに。

立花は魔導書から精霊玄武を出して、客たちを避難させる。一宮は半人半蛇の本性を現して、元神撰組三番隊の生き残り久坂有人が率いる刺客たちに立ち向かう。小島は魔法で刺客を霍乱し、避難の時間を稼ぐ。鳴宮がようやく意識を取り戻した頃、新たな局面を迎えた。剣士２人相手に苦戦していた一宮の目の前で、久坂に体当たりして弾き跳ばした男がいた。鮎川健司だった。健司は久坂を巻き添えにして、一年前に除去されず体内に残っていた爆弾を自爆させた。「純、兄さんと幸せに・・・」
それにひるんだテロリストの隙をついて、立花が客たちを玄武に収容して脱出した。その後で突入した警官隊によりテロ事件は終息した。

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「お前たちが政権に就いている限り、第二、第三の我々が現れるだろう。」逮捕されたテロリストはそう言い放った。披露宴の客のうち３人の政府役人、佐久間、大久保、清河が死亡し、 重軽傷者数名。これだけの犠牲を出した事件ゆえに警察の捜査はきっちり行われた。
国家権力による調査で、背後関係の一部が判明した。
・元賢者の学院の導師である“カナヤゴ”金山賢が背後にいること。
・ブラッドエンジェルズの犠牲者や神撰組残党を中心に構成されていること。
・ダークゴーストと名乗る武器商人から援助されていること。
しかし、黒幕の所在は闇の中のままである。
小島：金山を野放しにすべきでなかった。

小島は、新生賢者の学院に残った者たちに金山の消息を尋ねたが、金山派は残っておらず情報は得られない。鳴宮たちは、風見研究所に呼ばれた。リッター・ドラッヘは相変わらず動かず。ただ回収した繭状物体から魔剣が抽出できたらしい。さらに、一年前の決起時にダークゴーストから納品されたままの核爆弾を返品しろと言われたが、これには関わらずに通常の処理をしてもらうことにする。一宮純はテロの背後を独自に調査しようと、旧知の探偵“ヤマサン”に裏社会の情報を聞いていた。ヤマサンは元ブラッドエンジェルズの鮫島を街で見かけたと言う。死んだとばかり思っていた一宮純は、目撃情報をもとに渋谷のBAR「ダゴン」で張り込む。そこで、高級なスーツを着て、以前より景気の良さそうな鮫島に出会った。

鮫島は座間製作所襲撃の時に行動不能となり、純に見捨てられたことを「裏切り」となじる。純は鮫島に近況を質問するが、現在の職業については言葉を濁す鮫島だった。次にダークゴーストに関する情報を求めると、何かを知っているようす。冗談交じりで鮫島はこう言った「報酬は首３つでいい。一宮純、鮎川健司そして鮎川俊夫の首。」と。過去のことをかなり恨んでいるらしい。交渉決裂ということで、いったん別れた。日を改めて、もう一度BAR「ダゴン」で張り込む。今度は一宮と小島、そして鳴宮が離れた場所で様子を伺う。交渉の結果、鮫島は「報酬は鮎川俊夫の首だけでいい。」と譲歩するが、一宮純が了承するはずがない。再び物別れに終わった。店から出ていく鮫島の後を鳴宮がこっそり尾行していく。雑踏に混じる男“イン・ザ・ノイズ”の本領発揮である。港で一隻の船に乗り込むことを確認して“スズメ”に連絡をとる。凄腕クラッカーの“スズメ”は偵察衛星をジャックして、船の行く先を突き止めた。太平洋上の孤島近辺で電波障害のため、見失ったということだった。どうやら、その島が隠れ家らしい。

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それより少し前。
立花深雪は黒彩社の編集者、暗坂鬼一に連絡を取ろうとするが、なぜか連絡先がわからない。それどころか、黒彩社はこの国に存在していないことに気付いた。さらに蔵書をあさっているうちに「ダークゴースト、死の商人、太平洋上の孤島に潜伏」という自筆のメモを見つける。 気になって探すと「遺臣の会、テロの犠牲者で構成、黒幕は金山」というメモも見つかった。どういうことか悩むが・・・・

◆　◇　◆　◇

鳴宮の得た情報から、孤島に住むダークゴーストのもとを査察することが閣議決定された。 さらにアメリカ合衆国ハワイ臨時政府に交渉して、要請したときに孤島へ核ミサイルを撃ち込むことを約束させた。次善策というわけだ。
査察団のメンバーは10名、および送迎の巡視船。小島の新婚旅行？という冗談もあったが。 小島団長、立花評議員、鳴宮行、一宮純（ＰＣの４人）、 鳴宮真言、鮎川俊夫、三好セイカイ、元神撰組の宮本と沖田、そして小島が特別に呼び戻した天堂明（魔剣バルムンクの主）。

巡視船で孤島の近くまで乗り付ける。操船トラブルがあったが、上陸中に船員たちが修理するということで、査察団は上陸した。亜熱帯だというのに霧が立ちこめ、一軒の謎の洋館が建っていた。洋館を探索すると、食堂に13人分の席が用意されていた。まずは食堂を無視して探索を続けたが、宮本がトラップに引っ掛かってクローン分解毒のために死亡する。ひととおり探索しても収穫がないので、食堂に戻り、それぞれ指定された席に着席する。と、“ダークゴースト”品川、金山、鮫島の3人が瞬間移動したかのように出現した。まずは、メイド型自動人形がスープを運んでくる。が、査察団は口にしない。小島が2人の逮捕を主張すると、品川は不敵に笑って手元のボタンを押す。すると、金山、小島の椅子が階下に落ちていく。と同時にモニターが現れ、闘技場のような場所が映し出された。

金山が「好きな武器を取れ。」と言うが、小島は準備しようとしない。一方、食堂では鳴宮行が「義兄を助ける」と自分も降りることを主張する。品川は天堂明に呪詛をかけ、2人を闘技場に降ろす。天堂は「頭が痛い・・・」と何やらおかしな様子に。成り行きを見ていた一宮純も鮫島との決闘を要求する。と、今度は鮫島の要望も配慮して、鮎川俊夫も含めた３人が降ろされた。ただし鮎川俊夫は椅子に拘束された状態で。

闘技場で３組の戦いが始まろうとしていた。
小島浩成　VS　“カナヤゴ”金山賢
鳴宮行　VS　ダークゴーストに操られた天堂明
一宮純　VS　鮫島

鳴宮行は元クラスメートの天堂を傷つけたくないと思って武器落としを試みるが、魔剣チュルヴィングがそれを許さず、容赦なく天堂を斬る。小島は一瞬遅れたために細胞破壊の金槌の一撃を受けた。しかし、鏡から出現させたヤマタノオロチ（６本首）の猛攻が金山を倒す。鮫島はアサルトライフルで鮎川俊夫を狙うが、一宮純がカバーし、反撃して鮫島を撃ち殺す。フリーになった一宮純は蛇の尻尾を天堂に巻き付けて動きを封じた。

金山を殺したヤマタノオロチは制御不能になって小島を襲い、意識不明の重傷を負わせて、さらに暴走を続けようとする・・・。行動不能の獲物を目にして、魔剣チュルヴィングは小島にトドメを刺して生命エネルギーを吸い取ろうとする。鳴宮は必死に抵抗して少しだけ刃を逸らすが、その刃は無情にも自分を刺した。意識を失って倒れていく鳴宮・・・。
＃剣を制御するために意志判定をさせると、完全に制御できる2成功でも失敗でもなく、ぎりぎりの成功だったため、小島への攻撃は止めることが出来ると判定しました。

食堂でこの様子を見ていた立花は“ダークゴースト”品川に向かって言う。「もう決着はついたでしょう。これで終わりにしましょう。」と。品川は「あなたがそういう筋書きを望むのなら、そうしましょう。」と応じた。筋書き？なんのことだ？　疑問に思う立花。とりあえず立花の要求通りに殺し合いは終了し、生き残った者は食堂に戻ってきた。瀕死の小島、鳴宮、死亡した金山、鮫島は回収された。

「もう、ここは知られてしまった。別の場所に移ります。」と言い、“ダークゴースト”品川は背を向けて立ち去って行こうとする。その背後から、一宮純は「お前は許さない」と言って銃弾を放った。一発目、命中、まだ致命傷ではない。そして二発目は逸れた。
＃一宮純は命中判定に失敗。このタイミングで外すか、と思った。

銃弾が逸れたのは天意と解釈し「私はまだ死ぬ時でないようだ。」と言い残して“ダークゴースト”品川は去った。その行方は知れない。

品川は島を自爆させると言い残していたので、立花が精霊玄武を召喚して査察団を避難させ、脱出した。玄武内の異空間で、行動不能の致命傷を負っていた鳴宮は静かに息を引き取った。 はずが、一宮純の願いと鮎川俊夫の医療技術が鳴宮を蘇生させた。
＃命を助けようとする純粋な願いに感動したのと、非道なNPCだった鮎川の唯一の善行という展開も面白いと思ったので。

そして彼らは帰っていった。
小島浩成は、評議員から引退し、賢者の学院も辞職した。失業してどうするつもりや、という外野の声もあったが、真言と仲良く暮らしているらしい。余談ではあるが、立花から贈られた旅行券で新婚旅行をやり直した。一宮純は、恋人の鮎川俊夫とともに医療技術の研究に従事している。次に幸せを得るのは彼女かもしれない。立花深雪は政治に尽くした、ということになっている。鳴宮行は、大学に通いながら、世界平和のために活動している。魔剣チュルヴィングとともにある限り安息を得るのはいつの日か。

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原作　　立花深雪
『リッター・ドラッヘ戦記』（黒彩社）より

脚本　　藤林啓一郎

主演
鳴宮　行　as　katala
一宮　純　as　N
立花深雪　as　きよ☆
小島浩成　as　明之介

客演（special NPC）
風見良一　as　lesser
香坂真奈　as　双魚 嵐
綾小路観和　as　白兎

演出・監督　　藤林啓一郎

Special Thanks to　　吉田直
（『ジェノサイド・エンジェル　叛逆の神々』角川スニーカー文庫）

Respect to　　深作欣二監督
（映画『バトル・ロワイアル』『魔界転生』他、2003年1月没）

制作　　KURPG（京都大学ロールプレイングゲーム研究会）

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このストーリーはフィクションであり、立花深雪は架空の作家です。