セッションレポート「スリーピング・ビューティー（Sleeping Beauty）」

【第２幕：シシリア島、束の間の休息】
　夜明け前に、バーラエナ号はシラクサへ帰還した。眠れる美女（ペンダントの刻印からミナと名付けられた）の処遇についてはボスと依頼人が相談して決定することになり、一行はしばしの休息をとった。ミナは組織の息のかかった病院に収容された。昼過ぎに目を覚ましたミナに面会すると、記憶喪失ということが判明した。言葉も通じず、唯一シズマとジパング語で会話できたのみ。彼女は身体的特徴と船のデータからジパング人と推測された。それを横目に、看病しながら擦りおろしリンゴを作るAAの気遣いは健気である。しばらく様子を見ることになり、医者の指示によって、ローマ公用語の本を差し入れした。一方、ブルーゲイルは修理中。好物の鉛ボトル入り酒を飲んで整備員を泣かせたという事実があったとかなかったとか。

　翌日、シズマはお見舞いに野の花を摘んでくる。今度は梨を剥いているAA、ほんとに良い奴である。外出許可が下りたのでシズマとフェルミナとの３人でショッピングに出かけることになった。ミナは既にローマ公用語を習得しており不便はないらしい。いきなり見知らぬ世界へ放り出されたミナは心細く感じるところがあって「あなたたちしか頼れる者がいません。守ってくれますか。」とシズマ達を頼りにしていた。一方、ラザロとAAは「ロタール男爵」「クライン」について情報収集していた。男爵については収穫なし。「クライン」とは「クラインの壺」すなわち表裏のない立体、言い換えれば三次元版の「メビウスの輪」に由来する言葉と推測できた。

　夕方になって、ボスから招集がかかった。修理の完了したブルーゲイルも合流した。今回の任務は、ミナを極秘裏にミラノまで護送すること。極秘裏とは、つまり教皇庁に知られずにということ。海路・陸路を検討した結果、イタリア半島へ上陸して自動車二台で陸路を行くことになった。夜のうちに手配をすませ翌朝早々に出発する。

【幕間】 片眼鏡を掛けた美女が物憂い顔で書類を繰っている。その傍らに白い尼僧服の女性が現れた。
「カテリーナ様、“レクイエム”から連絡が入っています。」
「つないでちょうだい。」
「ボン・ジョルノ（おはよう）、氷の美女さん。相変わらずのようだな。ところで、例の件だが手筈通に出発した。」
「あなたも相変わらず。幽霊船調査の件はお礼を言っておくわ。それから、眠れる美女については、くれぐれも兄上に気付かれないように。本当はアイアンメイデンを迎えに出したいところだけど、現状では無理。ここは相変わらず人手不足。」
「引き受けた依頼はどんな犠牲を払っても最後まで遂行するのが、我が社のモットーだ。礼には及ばない。では、また連絡する。」