第6話「英雄戦争」
■ゴジラの爪痕
　前回ラスト。大毒龍ヴァレフス分体を倒して一息ついた頃、ヴァレフール伯爵家から使者がやって来た。グラスヴァールに急ぎ伯爵領に来て欲しいとのこと。国王ブラギスの寝所に通されると、他の4人のPCは影武者と気付く。グラスヴァール（PC1）だけ気付かない。ヴァレフール伯爵領に出現した大毒龍ヴァレフス分体を命と引き換えに倒し「ワシの死を３年間秘密にしておけ」と遺言したらしい。老いて保守的になったとはいえ、最期は武人であった。
　一方、アントリア子爵も大毒龍ヴァレフス分体との戦いで疲弊していた。グラスヴァール（PC1）は、国力の回復に努めることにした。山村だった首都マイオスを城砦にして防備を固めたり。

■それぞれの3年
　ダン・ディオードとの決戦を3年後に控え、それぞれ過ごしていた。
　グラスヴァールと妻ヴェラとの間に長男アルバスが生まれた。ヴェラからは「なぜ統一したいのか」「統一後に何をするのか」を問われるのだが・・・。「戦いを求める心だけでは勝てない」と言われて、考え込む。

　大毒龍ヴァレフスによって汚染された大地を浄化したノイ・ヨースチナは混沌毒4に侵されていた。場所の混沌レベル×毒強度のダメージを受けるという恐ろしい毒だ。影響を最小限にするため、エルバの街で技術者フラナガンが開発した、混沌を遮断する新素材の庵に引きこもって静養していた。時折、研究所で新型ゴーレムの起動実験をする音を聞きながら。
＃科学者フラナガンの正体は、宇宙世紀世界からの投影体です。サイコミュ兵器ですよ。

　フレアは領地を行脚して調査している道中、闇魔法師ライザに遭遇していた。秘密結社に勧誘するライザに対して、「時のワンド」に釣られて契約を結ぶ。ただし、ライザはフレアを完全に信用したわけではなく「今後とも見守っている」との言葉を残して去って行った。

　一人、戦争に備えて情報収集するネーレはアントリア子爵領に潜入していた。完璧な隠密能力で敵領深く、科学研究所付近まで潜入するのだが、戦車の修復・製作状況くらいしかわからなかった。時折、混沌に飲み込まれて自我を失いそうなところをタツマキの補佐で抑えるのだった。

　アーノスは妻ユリシアとの間に娘アリシアが生まれて幸せを満喫していた。妻は「もう戦争に行かないで欲しい」と願うが、そういうわけにはいかない。
＃なんということだ。2人が幸せモード、1人が隠居。1人が闇落ち目前。戦いに備えていたのは隠密ただ1人。それで戦争に勝てるのか？

ネーレの情報収集の結果、敵の動向が少しだけ判明した（達成値が低かった）。
・ダン・ディオードは混沌毒6に侵されている。
・3年経てば、ゴジラに破壊された戦車の修理は完了する。
・戦車の弱点は、起動前に搭乗員（少女3名）を倒すこと。
・魔法師セコイアが副将クライスと策を立てていた。内容は不明。
・魔法師セコイアは、闇魔法師ライザと密かに会っていた。

■決戦前
　かくして大毒龍ヴァレフスとの戦いから３年が経過した。ヴァレフール伯爵領でブラギス・インサルンド伯爵の国葬が行われた。

長男の演説「我々は一人の英雄を失った。これは終わりを意味するのか。否、始まりなのだ。かの400年前の英雄エルムンドはその身を呈して大地を浄化したという。父王ブラギスも我々の先頭に立って龍を倒し、ロードの有り様を示してくれた。残された我々は父の意志を受け継ぎ、この地を狙う野心持つ者から守らねばならない。伯爵領の諸君、我に力を貸して欲しい」

　そして、ダン・ディオード軍と戦うための出陣式が執り行われる。葬儀に出席するためグラスヴァールたちが首都を留守にした隙を狙って敵が進軍を始めたとの報告が入り、急いで国へ戻り部隊を整える。決戦場は紅が原。両軍の進軍速度から、ニュートランガーヌ領のダーンダルク城に近い紅の山の麓で激突した。振られた女シンシアも新型ゴーレム「ヘルメス」を操って加勢に駆けつける。

■紅が原の決戦
　両軍の哀戦士たち16部隊が戦場に並び、それぞれが旗を掲げて名乗りを上げる。敵軍の策略と闇魔法師の介入により混沌レベルは8という危険領域に上昇していた。グラスヴァール（PC1）の妻ヴェラが騎馬兵や主要NPCを率いて敵軍の配下を引きつけるということで、実質はPC5人VS敵軍5ユニット。人数は多いが、勝利条件は大将を倒すことだ。

　敵軍の陣容は、大将、苛烈なる革新者、ダン・ディオード子爵。副将、イザとなったら代理となる覚悟の盾の騎士クライス・アストン。参謀：手段を選ばぬ策士の召喚魔法師ローガン・セコイア「勝てば良かろう、なのだ」および召喚従属体タロス。用心棒：地球から召喚された投影体、5万回斬られた男、サイレント・サムライ（福本清三さん）。異界の科学技術で作り出した兵器、戦車。

　戦闘開始2ラウンド目にフレア（PC3）が闇アイテム「時のワンド」を用いて機先を制し、ファイアボールを炸裂させて敵将ダン・ディオードを討ち取った。だが、副将クライス・アストンが（ハンドアウトに書かれた事前情報の通りに）指揮を引き継いで軍を立て直した。
　4ラウンド目、フレア（PC3）は後方に孤立した隙を突かれ、召喚魔法師セコイアが瞬間召喚したトロールに叩き潰されて死亡。“不死の盾”アーノス（PC5）は離れすぎたことを後悔したという。
　6ラウンド目、ノイ（PC2）も混沌毒で弱っていたところに魔法をくらって気絶。そこからは泥沼の持久戦。両軍の盾役が活躍し、じりじりと削り合う。敵将クライスは千日手になることを恐れて休戦を申し出るが、グラスヴァール（PC1）は断固として断る。窮地を見かねた拳聖マスター・ペガサスが駆けつけてノイの口に仙豆を含ませ、立ち上がらせる。だが、自分の戦線を離れた代償は重かった。隙を突かれて、拳聖マスター・ペガサスは餓狼の騎士ヒュラムに斬り殺されてしまう。

　敵軍の魔法師セコイアが味方を巻き込んで範囲魔法を使う戦術に切り替えたことでPC側が危機に陥ったが、10ラウンド目になんとか決着がついた。ネーレの渾身の一撃が敵将クライス・アストンを大地に倒す。敗北が確定したことで敵の魔法師セコイアは逃亡した。大将と副将を倒して辛くも勝利した。だが犠牲も大きかった。PCグラスヴァール軍の戦死者4名。敵軍の戦死者3名、捕虜1名。
　第1話からPCの影となって諜報面を支えたタツマキは暴走するネーレを心配した隙を突かれて死亡。19歳の若武者ニルス・ルガード（アーノスの弟）は兄より活躍しようと功を焦った若さ故に討ち取られた。グラスヴァールは捕らえた敵将クライス・アストンから聖印を奪い、尋問した後に処刑した。
＃この世界に捕虜の扱いに関する条約は存在しないからなあ。

天下分け目の決戦にグラスヴァールは勝利した。めでたし、めでたし。と、おとぎ話ならハッピーエンドで終わるのだろうが・・・。
　指揮官を失ったアントリア子爵軍の残党は山野に逃れ、ゲリラとなるだろう。敵本拠地スォンジフォートは無傷のままだ。敵将を処刑したので、無血開城の交渉もできない。

■エピローグ：仲間の離散
　魔法師フレア（PC3）は見知らぬ天井を見上げていた。「生き返ったのか？」と疑問に思っていると、傍らには生命魔法師ライザの姿が。約束通り、見守っていたのだろう。戦場から遺体を回収し、秘密結社パンドラの隠れ家で蘇生させたと言う。カバーリングされなかった恨みや諸々の感情から、秘密結社に加わり、闇の道を進むことになった。この後、ニュートランガーヌ子爵領でフレアの幽霊を見たという噂が広まる。

　アーノス・ルガードは弟ニルスが戦死したため実家へ帰ることになった。自身はロードでないので騎士を継げないが、子供が成長したらロードとなるかもしれない。後継者が育つまで摂政となり見守ることになった。

　ネーレ（PC4）は高まり過ぎた混沌レベルに精神が崩壊した。信念/目的と仇敵セコイアへの因縁を忘却し、荒野を彷徨う。サポートしてくれるタツマキももういない。だが、突如現れた赤い仮面の影ロソンブラに心臓を突き刺され「竜の牙」を抜き取られた。その気があるならば、いつか快復するだろう。

　ノイ（PC2）は混沌毒に汚染され過ぎたため、混沌レベルを抑える庵に隠居した。時折、尋ね来る者に弓の手ほどきをしているという。しかし、事情を知らない市民が見れば、幽閉されたようにも見える。だが、イザというときはいつでも駆けつける覚悟を持つことは変わらない。そして、伝説の騎士として庶民に語り継がれるのだろう。

　グラスヴァール（PC1）は城砦となった首都マイオスで妻子と共に暮らしていた。しかし、残党軍がゲリラ戦を仕掛けてくるし、敵の首都は健在である。秘密結社パンドラも暗躍し、ブレトランド小大陸に争いの火種は消えない。いわば、第１話開始時点の戦況が攻守逆転したような状況だ。そして、戦争を共に戦った仲間は離散していなくなった。ニュートランガーヌ子爵領に新たな暗雲が渦巻いていた。

グランクレストRPGキャンペーン「亡国の反逆騎士」（Renegade Lord）完