第３話「夢をあきらめないで」

『ジャナストラ冒険ガイド』にはこうある。
野球、それは白球を追う青春。遥かなる地で発明された球技らしい。ジャナストラ大陸では、シェイパー帝国の辺境で流行している「ルナルボール」の起源が野球にあるらしい。ルナルボールの有力チームの一つにバッファロー族があったが、甲虫族の騎士ベレンに征服されて途絶えてしまった。竜巻アルデバランという打って良し投げて良しの名選手もいたらしいが・・・。

「何で、このような情報が載っているのか」と、調査しながら驚いていたペローマ高司祭ガントは驚いていた。試合開始前と終了後の模様を、ガントの獄中手記より紹介する。試合の様子は、実況中継の記録より。

■多次元宇宙の隙間
　銀月の異貌の神（ヨグ＝ソトースか？）によって、異次元に飛ばされた先は星の瞬く異空間だった。そこにあらわれたのは竜と船、竜からはこちらに来てほしいと電波が飛んできた。「常識」の呪文を使ってペローマ様に聞くと、どちらかを選ぶべきらしい。仲間たちがどちらを選ぶのかはお互いにわからないらしい。というわけで、ティールは船を、私とテツとゾルムは竜を選んだ。すると私たちは竜に連れられ別の空間にやってきた。そこにいたのは１人の魔術師だった。その魔術師はスターフィールドと名乗った。封神タイガースのシニアディレクターらしい。どうやら私たちを呼び出したのは彼のようだ。私たちを「アストロボール」の選手として召喚したらしい。

　一方、船に乗ったティールも別の空間にたどり着いた。そこにも魔術師がいた。そいつの名前はバレンタイン。海戦士トライスターズの監督らしい。ティールの手の焼印を見て何か勘違いしたらしく、アストロボールに出てほしいと頼み込む。さらには、どうやら例の流れ者冒険者たち「夢の狩人」も私たちより先に召還されていたようだ。タイガース側にはサリカ信者ライサンダーが、トライスターズ側にはアルリアナ信者ナスターシャ、ガヤン信者ナーブ、タマット信者ヘルスラッシャーがいた。

■ルールは覚えた
　早速「アストロボール」とはどんなものか知るために、記録映像を見れる変な箱を使ってアストロボールを観戦することにした（特殊アイテム「ペローマの小さき目」と似ているが、より大画面で、音声も記録できるらしい）。記録映像では封神タイガースと央華ドラゴンズの戦いが行われていた。いろいろ画面が変わる中で、優勝杯「紫光杯」がクローズアップされる。よくよく見てみると「次なる色彩」が付いている。スターフィールドに交渉すると、本来の「紫光杯」には「次なる色彩」は付いてないらしい。勝てば、外して持って行ってもいいらしい。働きに応じた報酬ももらえるらしい。というわけで、私たちはアストロボールに選手として出ることになった。

　早速、アストロボールの試合規則を学習した。それから、強化訓練室での訓練か通常訓練かで特訓することになった。訓練１日目、強化訓練室での特訓の生命力判定でファンブルしてダウンするガント、やっぱ魔法使いにはきついか、以後通常訓練に切り替え。訓練２日目、今度はティールがダウン。ゾルムとテツは強化訓練をやりきる。訓練を終了して野球技能や打撃テクニックを習得した私たちはいざ試合に臨むことになった。

■熱闘！HRP（helm rat park）一回の攻防
キンセラ世界の覇権を賭けて戦われる「アストロボール（星球）」もいよいよ決勝戦です。
ここまで勝ち進んで来たのは、海戦士トライスターズ。魔術師バレンタインの天候操作魔法の援護という不思議な助力もありますが。青波で育ったイチローをはじめ、海で鍛えた戦士たちが揃っています。対するもう一方のチームは、獣王の魂持つ選手たちが集った封神タイガース。央華ドラゴンズとの戦いで主力選手が何人も疲弊していますが、新たな助っ人を召喚したようです。栄冠は誰に輝くのでしょうか。さあ、プレイボールです。

先攻は封神タイガースです。海戦士トライスターズの先発投手は“まさかり投法”チョージ、ベテランながら豪球の球威は健在です。一回表、封神タイガースの先頭打者はワーラビットの赤兎、外角の変化球を見切ってセンター前ヒット！
　２番打者はテツ。すかさず赤兎は盗塁！これでノーアウト２塁です。初回からチャンスです。さすがは５年連続盗塁王。気持ちを切り換えて、ピッチャー第２球投げた。おーっと、これはあからさまな死球コース！よけた！ピッチャー第３球投げた、これは殺る気十分、連続して死球コースだ。だが、テツよけた！さすがは助っ人選手です。殺人投球を続けてよけました。続けて第４球、打った、打ちました。赤兎が帰って先制点、タイムリーヒットです。
３番打者はスズメバチ超人のハチキですが、チョージ渾身のストレートに空振り三振。４番タイガーセブン、５番シューティングアローは共にチョージの魔球にバットを折られて空振り三振に終りました。立ち上がりに１点を失ったものの、まさかり投法が冴え渡っています。

　一回裏、封神タイガースの先発投手はベテランのウィロー。トライスターズの攻撃、先頭打者は“振り子打法”のイチロー、ウィローの魔球にうまくタイミングを合わせて打ち返した。いきなり二塁打です。つづく２番打者は、アルリアナ信者のナスターシャです。お色気で投手を惑わすも、うまく打てず空振り三振。３番打者はティール、さっきのお返しとばかり死球、これはよけられません。これで１アウト１塁２塁です。４番打者“サムライ”ソニック千葉に対し、ウィローはエース投球で空振り三振にとりました。５番打者ダゴンも押さえ、この回０点。一回を終って、１対０でタイガースがリードしています。

　二回から五回までは両エースの投手戦でお互い点が取れません。五回裏には早くも、封神タイガースが２人目の投手“銀狼”大神武士に交代しました。（俳優の玉山鉄二に似た）狼の目をしたサムライ投手です。大神は五回六回をパーフェクトに押さえています。一方、海戦士トライスターズ六回表から２人目の四百ゴールドに交代しています。

■熱闘！HRP：ラッキーセブンの明暗
　六回を終わり、１対０で封神タイガースがリードのままです。さあ七回、ラッキーセブンの始まりです。両チームとも幸運の加護がありそうです。七回表、封神タイガースの攻撃は６番ガントから。全くタイミングあわず空振り三振。７番ゾルム、死球で出塁しました。もうスタミナ切れなのか、海戦士トライスターズ、四百ゴールドから海魔女セイレーンに投手交代です。8番ワーライオンに対し魔球を試みるが、失投で四球になってしまいました。ランナー１塁２塁のチャンスに、封神タイガース、オータム監督が代打を告げました。「代打Mr.バース」その名を聞いて、場内が一斉に湧きます。伝説の助っ人がどのような活躍をみせるのでしょうか。さあ、行けバース！
　セイレーン、第１球投げた。打ちました！快心の一撃に、打球はすごい勢いで飛んで行きます。越えた、スタンドの観客席を越えて遥か場外まで飛んで行きました。大場外ホームランで3点を加え、4対0です。封神タイガース一気にトライスターズを引き離しました。
勢いがついたタイガース、次は1番打者赤兎、セイレーンの音波魔球を巧く打って二塁打になりました。2番テツ、振り子打法でタイムリーヒットです。これで猛打賞、２打点の大活躍です。3番ハチキに対しては、投手セイレーン最後の力を込めて投げました。三振。ここで４人目の投手に交代です。七回途中にして早くも抑えの切り札、大魔神の登場です。4番タイガーセブンを魔神フォークで抑えきりました。しかし、この回の猛攻で、５対０と封神タイガースが大きくリードしています。

　七回裏、海戦士トライスターズの攻撃は5番のダゴンから。ここで“銀狼”大神武士、魂を込めた魔球「疾風雷神」を連投っだあ。試合規則では、投球に魂を込めることを禁じていない。しかし、投手の生命を削る禁断の投球、まさに命賭け。サブローを死球で出塁させたものの、無安打で抑えました。おそるべき魔球。八回表、八回裏は両チームとも三者凡退に終りました。大神武士、四イニングのロングリリーフを投げ抜きました。

　九回表、海戦士トライスターズの投手は大魔神が続投しています。1アウト後、七回の守備から9番レフトに入っているワーフォックスに安打を許し、次の赤兎を最後のフォークで抑えたものの、スタミナ切れのようです。しかし、もう代わりの投手がいません・・・。何やら、内野で守備についているティールの様子がおかしいようです。他人のように豹変したティールが、マウンドに上がるようです。慣れない投球で、２番テツに四球を許してしまいました。ここまでか。しかし、竜巻投法で3番ハチキを抑えきりました。まるで、別人のようです。

　九回裏、封神タイガースのオータム監督はここまで温存しておいたワータイガーJFKトリオを投入しました。ジェフ、藤沢球二、一人一殺で２アウト。追い詰められたバレンタイン監督は代打、“三冠王”オリオンを告げます。バレンタイン魔術おそるべし、準決勝で敗れたドラゴンズの監督をスカウトしてきた模様です。さすが往年の大打者オリオン、ワータイガーKから二塁打を打ちます。だが、万事休す。6番打者ペガサス、空振り三振で３アウト。試合終了、５対０で封神タイガースが勝ちました。

■試合記録

チーム名	1	2	3	4	5	6	7	8	9	合計
封神タイガース	1	0	0	0	0	0	4	0	0	5
海戦士トライスターズ	0	0	0	0	0	0	0	0	0	0

勝利投手：“銀狼”大神武士（先発投手が五回まで投げていないため）
敗北投手：“まさかり投法”チョージ
セーブ：ワータイガーK
勝利打点：テツ

最優秀選手：テツ
優秀選手：“銀狼”大神武士、赤兎、
敢闘賞：ティール、ウィロー、

＃７回表のバースの打席でクリティカルが出るとは思いませんでした。さらに、プレイヤーキャラクターへの打順の巡りが良く、テツが大活躍した結果に終りました。本当に、野球の神様はいるのかもしれません。

■戦い終わって
何とか試合は終了した。MVPの中にテツが選ばれた。タイムリー２発を打ったからな。一方で私は全然活躍できなかったが。まあ、まだましか、ライサンダーは戦力外通告だからな。
　ティールが魔剣で斬ると、「次なる色彩」は「紫光杯」から外れて結晶化した。これを誰が持つかでティールとテツとで揉めた。確かに「次なる色彩」の力を求めるというのは黒の月に通じる行為だ。しかし、テツの言う守りたいものを守るというのは重要だ。前回の魔剣による虐殺の原因はテツのミスだからな。だが、ティールが言うように暴走する可能性があるのは確かだ。私はテツが持ちたいのならば持てばいいと思った。私は今とくに力を欲しようとは思わない。だから、テツにその力は譲った。私の役目は、もしテツが暴走したらそれを追い詰め、殺すことだと思う・・・。それが鑑識としての私の役目なのだから。

　優勝に貢献した助っ人への報酬として、テツは「次なる色彩」の結晶を手に入れた。さらに、テツのガッツに感激したMr.Bからの個人的な贈り物として魔法の斧をもらった。ゾルムはこの世界にある「すし」という料理がいたく気に入ったらしく調理法を学んだ。私は最近疲労点をよく消費するのでマナストーンをもらった。そして、ルナルへ帰還することになった。

＃誤解しているようです。「次なる色彩」は黒の月や悪魔とは関係ありません。むしろ、悪魔とは全く別の、８番目の月に通じるかもしれない新たな力です。それから、「追い詰め、殺す」というのは鑑識や捜査官の役割ではありません。鑑識の役割は、残された手がかりから真実を明らかにすること。追って追い詰めるのは「復讐者」や「処刑人」でしょう。ルナル世界なら、銀月を信仰する翼人の思考に近いです。しかし、それも仕方ありません。ガントの本性は人間よりも彼らに近いのですから。

■京都上空
魔術師スターフィールドが召喚した星龍（スタードラゴン）に乗って私たち４人は帰ることになった。チェイサー「夢の狩人」」は、別口で船に乗って帰るらしい。星が瞬く空間を越えてルナルの大地に帰ってきたはずだが・・・。私は気づいた、マナが疎であると。ここはルナルではないのか、と思ったら蛇に翼が生えた変な怪物が出現！（銀月の神学知識判定に失敗）何かわからないが、戦闘になった。途中、ゾルムがファンブルして武器を落とすというヒヤッとした場面もあったが、爆発の霊薬弾が大ダメージを与えて撃沈させる。一息ついたのも束の間、空を飛ぶ変な物体が２機やってきた。（後で得た知識では）どうやら戦闘機のF-15イーグル改が飛んできたらしい。そして日本語で着陸しろと言ってきた（テツが理解した）。どうやらまた違う世界にやってきてしまったようだ、テツの世界へ。このバカ竜が、私の部下なら減給だ！

＃ガントに部下はいないって。星龍はバカではありません。ナビゲーションに正しく従ったまでです。行き先を決める意志判定で、失敗や低い成功度のなか、テツが一人だけクリティカル！サイコロの神様を見た思いでした。

【次回予告】
洛北大学の物語を覚えている者は不幸である。旧き想い出に囚われているから。一つの月の大地。その世界に妖怪は存在しない。月の魔法も失われて久しい。けれど、忘却の川に流されたわけではない。それゆえ妖精の話す伝説を語ろう。昴の星に願いを掛けるとき、神話が再び現れる。
次回、ガープス・ユエル・キャンペーン第４話「混沌の来訪者」 月光の煌めきが来訪者を呼ぶ。
クティクティ・フェリア（蝶羽根種の妖精）アイリス登場

第４話「混沌の来訪者」