第５話「罪と罰　〜魔都に惑う異邦人〜」

『ジャナストラ冒険ガイド』にはこうある。
セラエノ、それは銀月の異貌の神に関係のある場所。大いなる知識が集積する大図書館がある。その地の、書を守る者の一族に生まれながら、手違いでルナル世界に落とされた子は不幸だと思う。しかし、本人はどう思っているのだろうか。

師匠のアイザックの申し出を拒否しながら、魔導書『キタブ・アル＝アジフ』の知識や呪文に頼るのはどういう了見なのだろう。その男、ガントの獄中手記より。

■京都駅の惨劇
名状しがたき邪神が復活し、恐怖によってしばらく戦闘不能になっていたガント。ステージの上ではまだゾルムが「どうやって料理するんだ〜」と言いながらパニック状態になっていた。ふとガントが周りを見てみると翼人のレンとテツが、カブトムシ人間べレンとティールが対峙していた。ガントが気づいたときには、もう洛北大学オカルト研究会によって邪神は退散させられていた。ガントはとりあえず、ティールの方に応援に行くことにした。

　一方、邪神が退散されて復讐が果たせなかった翼人レンは「復讐を邪魔したのは、あいつらだな」と言って、翼をはためかせオカルト研究会の牧村麗子たちを襲おうとする。このままでは移動速度に差があるため妹たちを守れそうにない。今こそ危機中の危機だと思ったテツは「次なる色彩」に力が欲しいと願った。瞬間、天の力と大地の猛虎魂と人の願いが一体となり、テツは虎人間の姿に変身した。危機一髪で妹をかばい、そのまま猛虎の猛攻でわずか２ターンで翼人レンを撃墜した。

　ティールと対峙しているべレンは、騎士道精神らしき余裕を見せつけて「腕は二本で戦ってやろう」と、ブロードソードとソードブレイカーという装備。ソードブレイカーで魔剣を取り返そうと試みるつもりのようだ。最初の行動で騎士べレンのフェイントが決まって、ティールはかなりヤバイ状態になっていた。そこにやってきたガントは騎士べレンに「目くらまし」呪文をかけ援護した。魔導書『キタブ・アル＝アジフ』の呪文だけに、強力だ。「俺は騎士ではない。奴隷だ」と、騎士の決闘に応じないで仲間の力を借りたので、ティールに騎士ベレンに対して有利な戦いを運んでいた。ついには、翼人を倒し駆けつけたテツの一撃によって、騎士ベレンは倒れた。ティールは「奴隷仲間たちの仇を討てた」と安堵したようだった。

　一方、「夢の狩人」ナスターシャは、戦闘開始直後から、何故かアルリアナの舞を踊っていた。長い呪文を詠唱しているようだが、アルリアナ関係の呪文でできることってないなとガントは思っていた。これがまずかったのだが・・・、呪文で疲労し霊薬も尽きてできることもなかった。４ターンの舞によりナスターシャの呪文が発動し、次元の裂け目から亀型時空移動船が出現した。慌ててガントはナスターシャをとめようと移動しようにも移動力が低下していて手の打ちようがない。ゾルムはパニック状態から抜けていない。ティールとテツは、この時点ではまだ騎士と交戦中。阻止できる者がおらず、ナスターシャ、ライサンダー、ヘルスラッシャーの3人は「空中歩行」の呪文で逃げ出し、亀型時空移動船に乗り込んだ。最後に「移動方法が欲しければ爬虫類人間を探しな」と言い残して。騎士ベレンが倒れたのを見届けると、亀型時空移動船は時空を超えて消え去った。

　戦闘が終わった頃に、機動隊がきたのか催涙弾が打ち込まれ、観客たち一般市民を含めガントたちも全てバタバタと気絶した。

■特殊部隊GURPSへの参加
　気が付くと留置所にいた。外交官の滝一郎が面会に来て、逮捕された状況を説明した。ガントたちは、テロの犯人として捕まったのだ。邪神復活儀式は、「真実の光」教団による化学薬品／幻覚剤を用いたテロ事件ということになっているらしい。テロリストによる殺人、傷害が数件発生しており、人気歌手もテロリストに殺された。幻覚剤で気分の悪くなった客たちが何人も気絶した。首謀者は「真実の光」教団のシャクティ（本名：花村リン）で、幹部共々逮捕された。京都市北区にある教団本部からは、証拠の薬物が押収されたらしい。師匠のアイザックがいろいろ研究していたから、残っていたんだろう。教祖のシャクティとテツが昔の知り合いらしいし、儀式を阻止するために、ゾルムが歌手を、ティールが警備員を斬り倒したのも事実だ。この世界の法律をよく知らないとはいえ、犯した罪は償わねばならない。 　翌日、牧村麗子が弁護士の御影冬虎を連れて来た。こういう事件の専門家らしい。弁護士の尽力によって、司法取引を持ちかけられる。他に選択肢もなく、申し出に応じることになった。取引の内容はGURPSという特殊部隊に協力して爬虫人を倒すことである。

＃汎宇宙現実災厄異邦人に対する防衛隊（Guardian Universal Reality Plague Strangers）、略してGURPSは日本政府外務省の秘密組織として設立された。新規隊員には知らされなかった事実であるが、実働部隊は、自衛隊出身者、海外での傭兵経験者、特赦で参加する犯罪者などで構成されている。犯罪者出身の隊員にとっては、死刑か危険任務かという選択とも言える。要するに「毒をもって毒を制す」という、『ワイルド７』的な組織だ。

弁護士とGURPSの滝隊長と面会して、異世界のオーバーテクノロジーで作られたという誓約書にサインをした。どう見ても「ガヤンの誓紙」だ。知らないところで、何らかの交流があるらしい。隊員の案内で寮へ移動した。装備一式も返してもらい、新たにユニフォームも支給された。ルナル世界のレザーアーマーより軽く、スケイルメイルより頑丈な優れものだ。なぜか、封神タイガースの柄だった。気絶している間に精神探査されたらしい。ティールだけは、元の装備に愛着があるようで、ユニフォームを装備しなかった。
そうして、GURPSのG4部隊に所属することになった。しばらくは待機の日々が続いた。鍛錬したり、本で調べものをしたり、ゾルムなどは他の隊員から「寿司」の調理を習ったりしていた。

　第一の任務は、右京区の山中にあるトカゲ人間の拠点の制圧だった。以前に、教団への移動途中に襲われた場所の近くだ。洛北大学の龍川助教授がついて来ることになった。行くと、門は稼働しておらず、留守を守る3人のトカゲ人のみ。急襲して倒すと、同行していた龍川助教授が「旧き印」で門を封印した。

　数日が過ぎて、また拠点が発見された。今度は大原にあるようだ。この近くで合宿していた洛北大学の学生が１人被害にあったそうだ。行ってみると、多数の敵が待ち構えていた。トカゲ人の他にも蛇人間や亀人間などもいた。ここの門は、なんと稼動していた。 ガントたちG4部隊は奥にいる集団を倒すことにした。トカゲ人を2人ずつ相手にするゾルムとティール。突撃する際にブロックされ、テツとガントは遅れてやってきた。そこに亀人間の呪文「爆裂火球」が炸裂し、ガントがかなりのダメージを受けた。トカゲ人たちもかなりダメージを受けたが・・・。亀人間は次の「爆裂火球」にエネルギーを溜めようとするも、テツの攻撃を食らって、射撃呪文が自爆してダメージを受け気絶した。他の敵は、滝隊長やG1部隊、G2部隊が制圧していた。４人が行動不能（１人は石化）となるほどの苦戦だった。

　待機期間中に魔導書『キタブ・アル＝アジフ』から覚えた「言語理解」の呪文を使って、捕虜にした亀人間に尋問開始した。わかったことは、この門はルナル世界につながっていて、向こうのマスターゲートが開いている限り、それぞれの門は自在に開くことができるようだ。そのマスターゲートとはどうやら、以前に地の底深くでガントが解放した門のようらしい。爬虫人の目的はこの世界（地球）にいる女王を探し出して復活させることであるようだ。ルナル世界のマスターゲートを閉じるため、この門を抜けて帰還することにした。 任務を見届けるため滝三郎隊長と６人の部下が同行することになった。ここの門は、地球側に残った龍川助教授が封印する。

門を抜けて出た先も、爬虫人の拠点だった。慌てた隊員が掃射して倒した。洞窟の外に出ると、調査に来ていた人間たちに出会った。オクトバ村の巫女シンシア、魂歌の歌い手ゲンザとボルケーノ、それに「探し屋チャーリー」の生き残りテッド。５人目は初めて会った人物でペローマ高司祭トリリアンと名乗った。彼女らに聞いて、ルナル世界のジャナストラ大陸に帰って来たことがわかった。

どうやらあの時以来３年が経過しているらしく、状況は変わっていた。まず鉱山から銀の月に属する怪物がわらわらと攻めてきた。その混乱に乗じてシェイパー帝国も攻めてきたようだ。湾岸都市ウィスタリアがピンチ、そこにゾルムのライバル、英雄モーリタスが現れた。モーリタスはどうやら「次なる色彩」の力で湾岸都市ウィスタリアを「料理対決でしか争えない」料理都市に変えたらしい。料理ができない銀の月の怪物は料理人、モーリタスには勝てず、攻めあぐねている。シェイパーは退却していった。どうやら、この混乱を「シャストアの使徒」が助けてくれるらしい。
で、ティールがシャストアの使徒と思われているようだ。

トリリアンは「生き別れの弟を探している、お守りとして「銀の鍵」と「本」を持たせておいた。アイザックから消息を聞いて、この土地に探しに来た。」と語った。 その瞬間、ガントはトリリアンの弟であることがわかった。しかし、ガントは喜んではいなかった（元から喜ばないやつだが・・・）。「銀の鍵」と「本」をお守りとして持たしている以上、姉が銀の月のものであることはほぼ間違いはない。後で話してみたらセラエノから来たそうだ。つまり、この事件の原因はアイザックやガントだけでなくトリリアンもなのである。ガントは「アイザックとは決着は着いた。この事件の真の解決のために自分は銀、トリリアンと自分に決着をつけなければ」と思い、姉には気を許せそうになかった。

他のメンバーは再会を喜んでいた。次は、ゾルムの因縁の料理対決が見られそうだ。 その後、ガントは自分の血に流れるものと決着を着けるであろう。

【次回予告】
料理界の大御所いわく「口へんに未だと書いて“味”という。料理の道に、もうこれでいいというものはない。日々是精進」
古人いわく「ダンジョンに始まり、ダンジョンに終る。地下迷宮こそ基本」
最後に待ち受ける敵は何者か？　知恵と力と勇気が試される。
次回、ガープス・ユエル・キャンペーン第6話「戦士たちの帰還」 オカエリナサイ。

第６話「戦士たちの帰還」