第２話「再会」

■月影計画
　今宵は満月。蜘蛛怪人との戦闘の後、覚醒者たちは互いの連絡先を教え合って、とりあえず日を改めて再会しようということになった。山を降りる途中、満月を見上げた藤間（PC1）は胸の奥で何かが騒ぐのを感じた。藤間（PC1）の異変に得体の知れない不安を感じつつ、皆は山を降りていった。

　洛北大学ライフ工学研究所に戻った柳原真理（PC5）は、アタッシュケースに入っていたフロッピーディスクの解析を始めた。20年前のものだったが、奥にしまってあったPC-9801を持ち出してデータを読み取ることができた。その内容は、重大な情報であった。
――月影計画。1970年、大阪万博で目玉となった月の石。それは、非常に強力な力を秘めた代物だった。その力を狙い強奪を目論んだ秘密結社"THE NEXT"と、それを阻止するべく戦った正義の勢力との戦いの末、月の石は６つに分かたれ、見物人の体内へと取り込まれてしまったのだ。だが、秘密結社"THE NEXT"は諦めなかった。分たれた６つの石を宿す６人の人物、母親たちを探し出した。藤間宏文（PC1）こそは、母親の胎内で月の石を同化した者の一人。彼の体に月の石が埋め込まれている事を知った秘密結社"THE NEXT"は彼を誘拐し、来るべき次世代の王とすべく改造手術を施したのだった。

■大阪の抗争
　橘文雄（PC3）の家にやっかいになった藤間（PC1）は、翌朝、世間の情勢を知るためテレビのニュースを見ていた。大阪では、水野組の下部組織の北川組と吉岡組の抗争が激化して一般市民に死者が出たいた。アメリカ合衆国の大統領選挙では、民主党の２大候補にばかり注目が集まっていたが、ここにきて共和党の若手候補グレッグ・ハートマンが急速に支持を拡げているらしい。藤間（PC1）は、大阪のヤクザの抗争が叔母一家の住んでいた近所だと気付き、不安を覚えた。

　PCたちは洛北大学の近くにある喫茶店「ビフロスト」で合流して今後の方針を考えることにした。会議用の個室で相談していると、鬼塚（PC2）にヴァーミンイーター京都支部長の山崎から連絡が入る。大阪でのヤクザの抗争にロシアン・マフィアが介入し大変な事になっているので、ヴァーミンイーターが依頼を受けて警備に協力する。鬼塚（PC2）にも現場に向かって欲しいということだ。鬼塚（PC2）は他のPCたちにも協力して欲しいと頼む。叔母一家のことが気になっていた藤間（PC1）は承諾し、他のPCたちも向かう事にした。 　ヴァーミンイーター京都支部からヘリで現場に向かったPCらは、ヤクザ相手に派手な立ち回りを演じているロシア人の３人、女と若い男２人を発見する。上空のヘリに気付いた男が腕を振るうと、瞬時にヘリの動力が凍りつき、ヘリは墜落していく。緊急事態に、柳原真理（PC5）は「白き翼」を得たときのこと思い出し、飛行能力に覚醒する。鬼塚（PC2）も戦闘機動で飛翔し、２人で残りの３人を運んで無事に着陸することができた。しかし、機体制御を失ったヘリはビルに激突して大破した。

■野獣、マンモス怪人
　大地に降り立った５人の目の前にロシアン・マフィアらが立ちふさがる。彼らはカラマーゾフ四兄弟と名乗った。そして、かって橘文雄（PC3）が倒したアトミックベアーこそ四兄弟の次男、イワンであったことが明かされる。銃器を自在に操る長女ナスターシャ、アトミックベアー以上のパワーを持つ長男ドミトリー、そして得体の知れぬ雰囲気を纏った三男アリョーシャ。まずは５人の前にドミトリーが立ちはだかる。彼は二足直立したマンモスの姿に変身し、圧倒的なパワーで襲い掛かる。５人対１人という数の優勢もあって、なんとか力をあわせてドミトリーを倒した。だが、すでにナスターシャとアリョーシャは去っていた。ドミトリーから魔種吸引を行うと、力を失った反動で息絶えた。その表情は、何かをやり遂げた男の顔で、どこか満足げな笑顔を浮かべていた。

■再会
　周囲の状況もヴァーミンイーターの介入で抗争は鎮静化していった。騒ぎは収拾し、鬼塚（PC2）は事後報告をするため一足先にヴァーミンイーターに戻る事にし、ナムリ（PC4）もついて行った。藤間（PC1）はせめて元気にしてるかだけでも確認したいと、いとこ達を探すことにした。橘文雄（PC3）と柳原真理（PC5）が同行した。
　家の近くの道で藤間（PC1）は若い女性に遭遇した。彼女こそ探していた従兄弟の坂本千絵だった。しかし、本来ならすでに30代後半になっているはずの彼女は20代後半の容姿に見える。坂本千絵のほうは、藤間（PC1）の素性を一目で見抜いたようだった。とりあえず互いの事情を話すことにして、彼女の家に案内してもらった。坂本千絵は手料理をふるまい、叔母の料理と同じ味を藤間（PC1）は懐かしむ。
　坂本千絵が語るには、彼女も藤間（PC1）と同時期に誘拐されて、「王」の側近として 仕えるべく改造手術を施されたらしい。言われてみれば、柳原真理（PC5）も施設で出会ったことがあると思い出す。"THE NEXT"壊滅後、放置されていたのが10年ほど前に冷凍睡眠が解けた。しかし、彼女は"THE NEXT"についても「王」というのが何なのかも知らなかった。橘（PC3）は巻き込まれないよう彼女に真実を知らせない方がいいと言い、藤間（PC1）も同意した。ヤクザ抗争に巻きこまれて負傷入院した叔母の坂本美江の顔だけ見て、藤間（PC1）らは大阪を後にした。

■デモンパラサイトといえば焼肉だ
　一方、京都へ戻ろうとしていた鬼塚（PC2）は刑務所にいた頃に知り合った坂本哲夫と出会った。哲夫は、今は北川組で色々やっているらしい。とりあえず焼肉を奢ってもらうことになり、ナムリ（PC4）と二人でごちそうになった。焼肉を喰いながら近況報告と情報交換をする。そして、情報屋ダイヤのエースは鬼塚（PC2）がかつて懇意にしていた大神会の北岡朔也である事がわかった。
　鬼塚（PC2）がヴァーミンイーターに戻って抗争の報告をすると、山崎支部長は藤間（PC1）の力を危険視し、鬼塚（PC2）に彼を監視するよう命じた。

　橘邸に帰宅したナムリ（PC4）は前世の記憶の再生を試み、秘密結社"THE NEXT"チベット支部は、王の候補の中から真の王になる人物を選定する裁定者としての役割を担っていた事を思い出した。藤間（PC1）のほかにロシアのアリョーシャ、アメリカのハートマンなる人物らが月の石を体内に持つ、王の候補であったことまでわかった。
　翌日、洛北大学ライフ工学研究所で、柳原真理（PC5）は藤間（PC1）の体をCTスキャンに掛けた。確かに、心臓の逆の位置に石のような物体が存在していた。外科的手術での摘出は不可能と思われる。上司の松田康介は、柳原真理（PC5）の新たな研究対象（サンプル）が元同級生であったことに気付く。20年前と変わらぬ姿にあまり動揺せず、再会を喜びあった。

　鬼塚（PC2）が北岡朔也に連絡を試みると、北岡は京都に急いでやって来た。喫茶店「ビフロスト」で情報を聞き出すと、水野組が恐るべき怪物を飼っており、もはや手が付けられない状態になったと言う。新しい組長の水野次郎は20年前から十数年間行方不明だったらしい。上原尚樹（蜘蛛怪人）へ与えた情報について問いただすと、その事については何も知らなかった。精神操作で誰かに利用された疑いが強い。
　いったん北岡朔也と分かれた後で、鬼塚（PC2）と橘（PC3）たち５人が喫茶店「ビフロスト」で合流すると、忘れ物を取りに戻って来た北岡と顔を合わす。藤間（PC1）の顔を見た北岡は、明らかに異常な状態になり「女は預かった。かえして欲しくば万博公園まで来い」とだけ告げ、正気に戻った。アリョーシャとナスターシャの仕業だと確信したPCらは万博公園へ急いだ。

■太陽の塔
　万博公園では、戦闘員を引き連れたナスターシャとアリョーシャの背後で、太陽の塔に千絵と美江が吊るされていた。アリョーシャは藤間（PC1）の持つ月の石を奪って自分の力とするつもりらしい。月の石の力を得たアリョーシャは圧倒的な冷気を操ったが、藤間（PC1）もそれを上回る火炎能力を発揮し、激しい戦闘の末、ナスターシャとアリョーシャを倒すことができた。この戦いの一部始終は、物陰でコウモリ女に観測されていた。戦いが終わってからそれに気付いたが、飛び去った後だった。いっぽう、人質のことは、覚醒者による激しい戦いの隙に、坂本哲夫が救出していた。
　アリョーシャから月の石を取り込んだ藤間（PC1）は自分の力が高まっていくのを感じた。一方、ナムリ（PC4）は別の場所でも王の候補者同士による戦いが行われている事を感じ取った。“冒険王子”シンドバッドは妖霊ジンを呼び出して攻撃するが、槍を持ち白馬にまたがって攻撃する“白馬の王子”ジークフリードに負け、体内の月の石を奪われる。見届けるのは裁定者ラーフ。彼は100年以上生きているとも言われている。いずれ藤間（PC1）の前に立ちはだかるのであろうか。

　藤間（PC1）は坂本千絵と美江に、戦いが終わったら再び一緒に暮らせるから、それまで待ってくれと言うのであった。２人もその事を受け入れ彼を見送る。橘（PC3）は調停者会議に連絡をとり、坂本一家を安全な場所で保護してもらうように依頼するのであった。
　だが、移動の途中のアクシデントにより坂本夫婦と坂本千絵は別行動をとることになる。ナスターシャとアリョーシャの死体も棺に納められた後で行方不明になるのだが、それらのことをPCたちが知るのは後のことになる。

【次回予告】
警視総監「今の俺に出来ないことを、君がやってくれ、ロイヤルガード」
実験体「俺は失敗作じゃない。俺に、月の石をよこせ。王子さんよ」
最後の狼「大神会は解散した。俺にかまうな、鬼塚・・・」
狂気の刃「ストームブリンガー、この刃は血を好む」
プロフェッサー「君たちが望むなら、取引きに応じてもいいぞ」
腐敗と自由と暴力の支配する街、新宿で様々な思いが交錯する。その戦いに仁義はあるのか。
次回、デモンパラサイトキャンペーン第３話「抗争」に御期待ください。

第３話「抗争」