第３話「抗争」

■警視総監は動けない
　万博公園での戦闘から数日が過ぎた。アメリカ合衆国の大統領選挙を気にするが、一進一退のようで特に目立った情報はない。ハートマンについて調べても、留学していた期間が長い他は怪しいところはない。
　“ロイヤルガード”橘（PC3）は、飛岡猛志から呼び出しを受けて京都府警に出向いた。飛岡猛志は20年前の戦いで超人クロスホッパーとして先陣をきって戦った男だ。当時は一介の刑事だったが、今は出世しているらしい。志は熱い昔のままでも、覚醒者としての能力を失い、管理職の立場という見えない鎖に縛られて、自由には動けないでいた。
　飛岡猛志からの情報によると、かつて秘密結社"THE NEXT"に属していたプロフェッサーＺが今も生きているらしい。ヤクザ風の男たちと一緒に写っている写真を見せる。新宿の水野組にいるらしいので、部下に探らせたところ、覚醒者でさえ「恐ろしい、狂気に犯される」との言葉を最後に音信不通になった。というわけで飛岡は「今の自分にできないことを、君たちにやってもらいたい。君はかつての力を取り戻しつつあるようだしな」と、橘文雄（PC3）に依頼する。橘文雄（PC3）はハートマンについて調べてほしいと告げ、この件を引き受けることにする。

■試作体の悲劇
　一方、橘の家で留守番をしているナムリ（PC4）と藤間（PC1）だが、なんだか焦げ臭いことに気付く。どうやら火事のようである。消火しようと思って火元に行ってみると、扉の隙間からスライミーな者が現れて悪魔のような姿に変わった。どことなく藤間（PC1）の変身形態に似たところがある。彼は「俺は三号。月の石をよこせ、そうすれば俺は生き延びられる」と襲いかかってくる。ナムリ（PC4）は「火はほっておこう、ここに橘さんがいてもそう言うはずだ」と言い、２人は変身して実験体三号と戦い始めた。実験体三号のキリングハウルは強力であり、その他の攻撃もくらったこともあって藤間（PC1）はかなりヤバイ状況に。そこに“幸運にも”通りかかった鬼塚（PC2）と柳原（PC5）が加勢したこともあって、なんとか実験体三号を倒すことができた。しかし、橘が借りていた一軒家は焼失してしまった。実験体三号は、フロッピーディスクにあったような情報のハードコピーを持っていた。どうやら秘密基地から逃げ出した者らしい。なにわともあれ、帰って来た橘文雄（PC3）と情報交換して、東京で水野組を調べることした。その晩は焼肉パーティーで傷を癒すのだった。

■悪魔が来りて笛を吹く
　新宿へ行く前に情報屋の北岡に確かめると、大神会の生き残りが新宿にまだ２人いることがわかった。大神会の組長の甥だった鳴神雄基は北海道にいることも知った。北海道は後回しにして、新宿へと向かった５人は二手に分かれた。
　鬼塚（PC2）は橘（PC3）と共に大神会の生き残りの一人、沢井に接触した。鬼塚（PC2）は「新宿に帰ってきたのは水野組をぶっ潰すため」と断言して、沢井の協力を確保する。沢井から、組長水野次郎の周りには四天王と呼ばれる取り巻きがいることと、古くからの人間とは四天王とはあまり仲がよくないことを聞く。また、参謀の大久保英世の容貌などを確認すると、橘（PC3）はプロフェッサーＺと同一人物らしいと推測する。

　一方その頃、オープンカフェで待っていた他の３人の耳には不思議な笛の音が聞こえてきた。笛の音が聞こえるとその場にいたすべての生き物の行動が停止する。笛の音をどこからか響かせながら、スペイン訛りの日本語を話す男（プロフェッサーＺ）が女性（ジェシカ）を連れて現れた。プロフェッサーＺは藤間（PC1）に向かって「久しぶりだな」「お前は生きとし生けるもの全てのために必要なのだ」「水野次郎の器は小さすぎる。やつは失敗作だ」「ラスプーチンやパラケルススの好きにはさせん」「ほう、裁定者を味方につけるとはなかなかやるな。従者も見つけたようだし」と語りかける。
　それに対して藤間（PC1）は「僕は真の王になんかなりたくない。秘密結社"THE NEXT"を潰して家族と一緒に暮らしたいだけだ」と答える。プロフェッサーＺが「家族とは誰だ」と質問すると、藤間（PC1）は「お前には関係ない」と言い返す。プロフェッサーＺは見抜いたように「千絵はお前のために部下を集めると言ってくれたぞ」と言う。「とにかく水野次郎を倒せ。もたもたしていたらハートマンやジークフリードに負ける」「成長する要素を持たせすぎたために今のお前は弱いのだ」と助言する。だが、怒りに我を忘れた藤間（PC1）は「お前の指図は受けない」と言い放つ。あくまでも冷静なプロフェッサーＺは「用があればいつでも連絡してくれ」と言い残し、その場を立ち去った。
　どうも笛の音も声も彼が持っている携帯から発せられているようである。次に会ったときのため、笛の音に対抗する手段を柳原真理は（PC5）は洛北大学ライフ工学研究所の松田康介に依頼した。松田は、笛の音のサンプルを入手すれば出来ると頼もしい返事をした。

■俺たちに策はない
　一度合流した５人は情報交換した後で、水野組の下っ端から情報を得ようと試みることにした。鬼塚、橘、ナムリの３人で溜まり場からでてくるところを待ち伏せし、一般人に入れない空間遮断をした。一人だけ結界空間に入れることがわかり、その男に話しかけてみた。鬼塚（PC2）が「お前は凄い力を持っているようだな」とかまをかけてみると、男は「水野組に入れば、力を得られるぞ」と答えた。とりあえず、その男、“ディアボロス”春日からは連絡先だけを聞いて別れた。

　ヴァーミンイーターから鬼塚（PC2）へ追加情報が送られて来た。それによると、四天王とは「リキ」「ジェシカ」「大神礼治」「オーギュスト・ベルナール」の４人らしい。オーギュスト・ベルナールが、イギリス支部から共生武装ストームブリンガーを盗み出したという。
　また、大神組の生き残りの大岩信一とも連絡をとった。彼は決起の日に備えて、ホームレスをしながら、大量の銃器を準備していた。
　ここでプロフェッサーＺをどうこうするのはかなり難しいので、とりあえず水野を潰そうということになったはいいが、水野組の本拠に殴りこみに行って勝てるという成算がない。プロフェッサーＺの力を借りればなんとかなるかもしれないが、藤間（PC1）や橘（PC3）としてはそういうわけにもいかない。ナムリ（PC4）が単独で、秘密裏にプロフェッサーＺに連絡をとり準備をしてくれるよう依頼した。そして、６日後。

■決闘
　策が立たないままホテルで過ごしていると、タクシー運転手をしている沢井がやって来た。「迎えに行くように言われました」と言い、かつて大神会の屋敷だった場所に５人を連れていく。いぶかりながらも現状を打破するために、PCたちは向かった。
　屋敷の中で待っていたのは、組長の水野次郎、ジェシカ、赤毛の犬（リキ）、大神礼治、人数あわせの春日五郎太（橘たちが接触した“ディアボロス”春日の弟）。床の間には大神会がかつて所持していた埴輪の像、明らかに偽物とわかる大神会を馬鹿にしたつくりである。
　鬼塚は「何か用か？」と問う。水野次郎は「リベンジマッチを、といってきたのはお前の方だろう」と言い返し、微妙に話がかみ合わない。水野次郎は続ける。「俺はどちらかというとその少年の方に用がある」「ロシアのアリョーシャを倒したそうだな」
　ここはもう戦うしかない、ということで戦闘に突入した。いろいろな攻撃の応酬があったがまず倒れたのは春日五郎太。戦闘中に衝動の副作用に襲われた藤間（PC1）は、倒れていた春日から吸血し、とどめを刺した。この衝動的な行為が後に問題になるのだが、それは先の話。

　ナムリ（PC4）が「禍々しき夜」で水野組のメンバーに大ダメージを与えるも、大神礼治はストームブリンガーで柳原真理（PC5）を切りつけることによって自身のダメージの回復をしてしまう。だが、魔剣の呪いにより大神礼治は致命的失敗を繰り返す不運で敗れた。水野組の四天王は一人また一人と倒れ、最後に残った水野次郎も橘（PC3）のアイシクルランスによって倒された。「俺はやはり失敗作なのか」という言葉を残して、水野次郎は死んでしまうのであった。
　ジェシカだけはマイトであることから魔種吸引されず、尋問される。彼女は小さい頃からプロフェッサーＺに育てられ「王子を助けなければならない」と教育されてきたらしい。ジェシカは「私ついていきます」と藤間（PC1）に付いて行きたがった。君はもう自由だから、と説得しようとすると「かよわい女の子をこんなところに一人で置いていくんですか？」とあくまで同行を主張するのであった。

【次回予告】
吸血衝動に目覚めた藤間宏文（PC1）を見る周囲の目が冷たい。
警視総監「彼をどう思う、ロイヤルガード」
泉兆和尚「危険要素は排除すべきだ」
“星見”綾小路観和「彼の運命は、読めません」
某女性「あの人の仇！」
いっぽうで、日出る国の王子を取り囲む愛人たち？
坂本千絵「百人の仲間を集めて来ました」
ジェシカ「あなたが守ってください」
新ヒロイン「・・・」
最後の王子は、意外な申し出をもちかける。
そして、六つの月石の欠片を集めたとき、神龍が現れる？？
「願いを言え、ただし死者蘇生は不可。美女のパンティも不可」
次回、デモンパラサイトキャンペーン第４話「月影」に御期待ください。

第４話「月影」